時系列別、取るべき対応と注意点チェックリスト
予期せぬ交通事故によりご家族がお亡くなりになられた場合、ご遺族の精神的負担は計り知れません。
そのような中でも、亡くなられたご家族のためにも、損害賠償(保険金)請求のための情報を把握し、加害者及び保険会社との交渉に取り組まなければなりません。
ここでは、ご遺族の方が確認しておくことが望ましい点、気を付けるべき点をまとめました。本リストが少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
交通事故直後の対応について
その後の注意点について
交通事故でご家族を亡くされた方へ
交通事故でご家族を亡くされたご遺族の皆様、故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
ご家族が突然の交通事故でお亡くなりになられた場合、ご遺族の悲痛や精神的負担は計り知れません。
他方で、加害者に対する損害賠償請求は、被害者のご遺族が行うことになります。そのため、ご遺族は、事故によってご家族を失った悲しみを抱えた事故直後から、葬儀や、相続手続に加えて、損害賠償の手続きもしなければなりません。警察から捜査への協力を求められることもあるかもしれません。
当事務所では、事故直後から、ご遺族に代わって保険会社や加害者との連絡窓口になり、今後の見通しをつけて、「どうすればよいのかわからない」状態のご遺族の負担を少しでも減らしたいと思い活動をしています。
死亡事故の場合、被害者の方は事故状況を説明できないため、加害者側の一方的な説明に基づく事故態様で話が進んでしまうことがあります。
そのため、当事務所では、警察が作成した刑事記録を取寄せて事故状況を確認したり、刑事裁判の被害者参加をサポートするなどして、事故態様、過失割合について被害者側の立場から検討するようにしています。
以下に死亡事故におけるご遺族の皆様に知っていただきたいポイントをまとめました。
少しでも、お困りごと、不明点等ありましたら、当事務所では事故直後からのご相談が可能ですので、無料相談をご利用ください。
ご遺族の方が、知っておきたい4つのキーワード
死亡事故の損害賠償
保険会社から提示される保険金額は、裁判所が認める本来受領できるはずの賠償金額より低額であることがほとんどです。死亡事故のような重大な事故に遭われてしまった場合には、保険会社の提示額と適正な賠償額に大きな差が出やすいため、必ず保険会社から提示された示談内容が適正かどうかを専門の弁護士にご相談されることを強くお勧めします。決して安易な示談はしないで下さい。
ここでは、交通死亡事故で問題となる主な損害についてご説明いたします。
慰謝料
死亡慰謝料は、被害者の家族構成や、加害者の態度等、具体的な事情によって増減されます。
死亡慰謝料の目安は、被害者が一家の支柱の場合2,800万円、母親・配偶者の場合2,500万円、その他の場合2,000~2,500万円となっています。(※裁判実務に基づく賠償額の基準が掲載されている本「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)の基準です。)
上記の基準はあくまで目安ですので、ご遺族のお気持ちや個別事情を可能な限り反映した慰謝料額を請求する必要があります。また、飲酒運転やひき逃げなど特に悪質な事故態様である場合には、これらの点を考慮して慰謝料を検討する必要があります。
逸失利益
死亡逸失利益は、被害者が事故に遭わなければ得ることができたであろう収入のことをいいます。
<計算式> 基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に応じたライプニッツ係数
死亡逸失利益は、事案によって、基礎収入額をいくらとみるか、生活控除率を何割とるか等について争いになり、計算方法によって賠償額に大きな差が出てくるところです。
葬儀費用
裁判実務の基準ですと、葬儀費用は150万円程度が原則です(ただし、実際にかかった金額が150万円以下の場合は実際に支出した額になります)。
なお、香典や香典返しの金額は考慮しません。
その他(治療費等)
事故後の治療費、交通費など、事故に遭わなければ発生しなかった損害について、上記の他にも加害者に請求できるものがあります。
相続
交通事故による被害者ご本人の損害賠償請求権については、法定相続人が相続することが原則です。
しかし、相続人同士の意見があわず、相続人の代表者を決められない場合などは保険会社も交渉に応じてくれないことが多いです。なぜなら、保険会社は相続人全員との一回的解決を望むからです。
ただし、法律上は、損害賠償請求権は相続分に応じて当然に相続するとされており、相続人単独で自身の相続分を訴訟等で請求することは可能です。
出来るのであれば、交通事故を引き起こしたのは加害者ですから、相続人全員が一体となって加害者に対峙することが望ましいです。
当事務所では、戸籍収集等の相続人調査、相続人間の話合い、遺産分割協議なども含めてサポートしております。お気軽にご相談ください。
仮渡金
死亡事故の場合、当面の費用として治療費や葬儀費用など多額の金額が入用になる可能性があります。
また、一家の大黒柱がいなくなってしまった場合、ご家族が当面の生活費に苦慮することもあります。
これらの費用について相手方保険会社が対応しない場合、遺族の方の生活をおびやかすことにもなりかねません。
自賠責保険では、このような早急な支払いの必要がある場合に備えて、仮渡金という制度があります。死亡事故の場合仮渡金の申請が通れば、1週間程度で、保険会社との示談が成立しなくとも損害賠償の一部として290万円を受け取ることが出来ます。当事務所ではご遺族のご要望に応じて仮渡金の申請のサポートもしております。
被害者参加
重大な交通事故の場合、刑事事件手続にも一定の関与をしていくことが可能です。
捜査段階における制度
- 被害者連絡制度(警察による連絡制度)
ひき逃げ事件、交通死亡事故等の重大な交通事故事件については、警察が被害者またはそのご遺族に対する捜査状況等について連絡をする「被害者連絡制度」というものがあります。
これにより、重大な交通事故事件の被害者は、事件を担当している捜査員から捜査状況や加害者の氏名、年齢等加害者の情報、加害者の処分状況、起訴・不起訴などの処分結果を聞くことができます。
なお、重大な交通事故とは、①死亡ひき逃げ事件、②ひき逃げ事件、③死亡または全治3カ月以上の傷害を負った事件、④危険運転致死傷罪等に該当する事件、のことを言います。 - 被害者等通知制度(検察庁による通知制度)
被害者やご遺族の方に、事件の処分結果、刑事裁判の結果、加害者が受刑中の場合には刑務所における処遇状況やその出所時期などを通知してもらえる被害者等通知制度というものがあります。通知を受けるためには、事件の担当検察官等に対し、通知を希望する旨伝える必要があります。
なお、事件の性質によっては、通知を希望したとしても、検察官の判断により通知されない場合があります。
公判段階における制度:被害者参加制度
- 被害者参加制度とは
公判、つまり正式な刑事裁判において、被害者やそのご遺族の方が、刑事裁判に参加できる制度のことを被害者参加制度といいます。この制度ができる前は、被害者やご遺族の方は、単に加害者の刑事裁判を傍聴することしかできませんでしたが、平成20年12月から、裁判に参加できるようになりました。 - 被害者参加制度の対象事件
被害者参加できる事件には一定の制限がありますが、過失運転致死傷罪は被害者参加の対象事件となっていますので、交通事故事件において加害者が被害者を死傷させ刑事裁判になっている場合は、裁判所の許可を得た上で、被害者やそのご遺族は被害者参加することができます。 - 被害者参加できる人
被害者ご本人、被害者の法定代理人、被害者がお亡くなりになった場合や心身に重大な故障がある場合には被害者の配偶者、直系親族、兄弟姉妹がその対象となります。 - 被害者参加するための手続き
被害者やご遺族、または被害者の法定代理人や委託を受けた弁護士から、事件を担当する検察官に対し、刑事裁判に参加したい旨を申し出てください。
その上で、担当検察官から裁判所に対し、被害者参加の希望があった旨の連絡がなされます。そして裁判所から、被害者参加の許可がなされれば参加できるようになります。
なお、申し出ができる時期は、起訴後からその事件の裁判が終結されるまでの間になります。上訴審から参加することも可能です。
被害者参加の内容
では、被害者参加とは実際にどのようなことができるのでしょうか。
以下に詳しく見ていきましょう。
- 公判期日に出席することができます
被害者参加をすれば、裁判が開かれる日に、被害者として法廷に加わることができます。被害者参加制度がなかった時代は、被害者は一傍聴者として傍聴席から裁判を傍聴することしかできませんでしたが、被害者参加制度ができてからは、法廷の中に入ることができるようになりました。 - 検察官の活動に対し意見を述べたり、検察官の活動に対する説明を受けたりすることができます
検察官に対して、検察官の証拠調べの請求や論告・求刑などの検察官の活動に対し被害者やご遺族としての要望を伝えることができます。また、検察官の意見と被害者やご遺族の意見が違う場合には、検察官の意見はどうしてそういう意見なのか説明を求めることができます。 - 証人尋問をすることができます
被害者参加した場合、裁判所の許可を得て、その事件の証人に対し尋問をすることができます。
ただし、尋問できる事項については一定の制限があり、証人尋問の場合には、情状に関する質問のみ行うことができます。
例えば、加害者の監督人として加害者の家族が証人として証言する場合には、その家族が本当に監督人としての能力を有しているのか、加害者を今後監督できるのかなどの証明力を争うために尋問をすることができます。 - 被告人に質問をすることができます
被害者参加した場合、裁判所の許可を得て被告人(加害者)に対し、被害者やご遺族自身の意見を述べるために必要な内容について、被告人に質問することができます。
証人への質問とは異なり、被告人(加害者)に対しては、質問事項に制限はなく、犯罪事実に関する質問も可能です。 - 意見陳述をすることができます
被害者参加した場合、裁判所の許可を得て、事実または法律の適用について意見を述べることができます。被害者やご遺族が、検察官のように、被告人(加害者)の求刑について意見を述べることもできます。
ただし、意見を述べる範囲は訴因(起訴状に記載された犯罪事実)の範囲に限られるため、起訴されていない余罪などについて意見を述べることはできません。
このように、被害者参加をすれば、裁判の各場面で、裁判に参加することができるようになります。
また、ご自身でこれらの活動を行うのがためらわれる場合には、被害者参加代理人といって、ご自身の代わりに被告人への質問を行ったり、意見陳述を行ったりする弁護士をつけることも可能です。
ただし、公判における被害者参加を行うためには、加害者が正式な刑事裁判にかけられる必要があります。すなわち、不起訴、略式命令事件は対象になっていません。
当事務所では、被害者参加についても積極的に取り組んでおり、多数、被害者参加代理人として刑事裁判に参加した実績があります。
ご遺族の方ができること・・・死亡事故には弁護士事務所へのご相談を!
交通事故で大切な家族を亡くした悲しみは決して癒えません。そのような辛い中で、ご遺族の方にはやらなければならないことが多くあります。損害賠償金の請求方法を知らないまま、示談を成立しないように、まずは弁護士にご相談して下さい。