専業主婦の逸失利益はどのように計算されますか?
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主婦の基礎収入はどうやって算定するのか?

専業主婦の場合、現実の収入を得て家事労働に従事しているわけではありませんが、主婦にも基礎収入があると認められます。
専業主婦の場合、女性全年齢平均の賃金センサスの平均賃金を基礎収入として逸失利益を計算します。なお、専業主夫の場合であっても同様です。
労働能力喪失率とは?
後遺障害により被害者の労働能力に制限がかかります。それを労働能力喪失率といいます。どれくらいの労働能力を喪失するかは、認定された後遺障害等級によって定められており、それに基づいて計算するのが原則となります。
等級ごとに定められた労働能力喪失率は以下のとおりです。
1級 | 100% | 2級 | 100% |
---|---|---|---|
3級 | 100% | 4級 | 92% |
5級 | 79% | 6級 | 67% |
7級 | 56% | 8級 | 45% |
9級 | 35% | 10級 | 27% |
11級 | 20% | 12級 | 14% |
13級 | 9% | 14級 | 5% |
なお、裁判では、症状、被害の程度、被害者の職業に応じて、上記とは異なる労働能力喪失率が認定される場合もあります。
労働能力喪失期間とは?
(1)後遺障害により労働能力に制限がかかる期間のことを労働能力喪失期間といいます。
(2)後遺障害は一生残る障害のことをいいますので、労働能力喪失期間は、働けなくなる年齢まで認められるのが原則です。働けなくなるまでの年齢は、実務では67歳までとされています。
症状固定時に67歳を超えている場合や、症状固定日から67歳までの年数が平均余命の2分の1より短い場合には、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。
(3)ただし、労働能力喪失期間は、被害者の年齢や症状の程度によっても異なりますので、必ずしも就労可能年数まで認められるものではありません。
特に、後遺障害等級14級の場合は、労働能力喪失期間5年、12級のうち疼痛や可動域制限の場合は10年とされる場合が多いです。
ライプニッツ係数とは?
逸失利益を算定するにあたっては、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間ではなく、労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数というものを掛けます。
これは、本来であれば、逸失利益という将来もらうはずの賠償を今まとめてもらうことから、ライプニッツ係数を掛けるという運用になっているためです。
将来もらうべきお金を今もらうことにより、将来にわたって利息がつくことになります。そのため、その利息分(1年で3%の利息が付く前提で計算されています)を控除しましょう、というものがライプニッツ係数となります。
例えば、労働能力喪失期間15年に対応するライプニッツ係数は、11.9379です。将来分を今もらうことにより、約3年分が利息として引かれることになっています。
今は普通預金の利息が0.001%という稀に見る超低金利時代のため、「1年に3%利息が付く」なんて夢のまた夢の世界ですが、民法上、利息が3%になっているため、このような計算方法になってしまっています。
逸失利益の計算の具体例
例:30歳の主婦がむちうちで「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害14級9号となった場合
- 基礎収入(賃金センサス全女性平均)
3,819.200円 - 労働能力喪失率(後遺障害14級9号認定)
5% - 労働能力喪失期間のライプニッツ係数(むちうちの場合5年のライプニッツ係数が多い)
4.5797 - 計算式
3,819,200円×5%×4.5797=874,539円
まとめ
- 主婦の基礎収入は賃金センサス全女性平均で計算します。
- 【主婦の基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間のライプニッツ係数】で後遺障害逸失利益の金額が決まります。