高次脳機能障害の場合成年後見申立が必要ですか。
弁護士からの回答
被害状況によっては必要です。
申立をするかどうかは被害者やご家族の一生に関わってくることですので慎重に検討しましょう。
申立をするかどうかは被害者やご家族の一生に関わってくることですので慎重に検討しましょう。
―――― 目次 ――――
成年後見制度とは

成年後見制度とは、判断能力が欠けているのが通常の状態のため、自らの意思で物事の判断ができない場合に、裁判所の監督の元、他人が代わりに判断等を行うことができるようにする制度です。裁判所へ申立を行い、裁判所が決定を出すことにより成年後見人が選任されます。
高次脳機能障害と成年後見

高次脳機能障害の場合、事案によっては被害者ご本人の判断能力が欠けているということで成年後見申立が必要となる事案があります。保険会社に保険金請求をするにあたっても、判断能力がないと請求ができませんので、そのような場合にも裁判所への成年後見申立を検討します。成年後見制度の詳細は以下をご参照下さい。
参考:成年後見制度について(裁判所)
成年後見人には誰がなるのか?
ご家族がなる場合や、弁護士等の専門家がなる場合があります。ご家族・専門家のどちらがなるかについては全国の裁判所によって運用が若干異なっています。
また、ご家族が成年後見人となる場合には成年後見監督人という成年後見人を監督する弁護士などの専門家がつくこともあります。
ご家族が成年後見人になる場合の例
- 子供が高次脳機能障害の被害にあい、親が成年後見人になる場合
- 親が高次脳機能障害の被害にあったが、子供達全員の間で特定の子供を成年後見人にすることに合意ができている場合
弁護士が成年後見人になる場合の例
- 家族間で金銭のことでもめており、財産管理は専門家が行うべきと判断された場合
- 家族間で金銭の貸し借りがあり、財産管理は専門家が行うべきと判断された場合
- 高額の保険金の管理は専門家が行うべきと判断された場合
成年後見人になった場合
- 財産管理を成年後見人が行うこととなります。
- 定期的に裁判所に財産の状況を報告する必要があります。
- 本人に代わって契約関係の締結等を行います。(ただし、自宅の処分など、家庭裁判所の許可が必要な事項もあります。)
成年後見以外の制度
類似の制度に補佐、補助という制度があります。補佐・補助は成年後見の状態にまでは至っていないが、何らかの手助けが必要な事案の場合の制度です。補佐制度、補助制度の詳細は以下をご参照下さい。
参考:補佐制度について(裁判所)
参考:補助制度について(裁判所)
高次脳機能障害と成年後見のよくある質問
- Q後遺障害等級が何級の場合、成年後見が必要ですか?
- A一律の基準はありません。ただし、後遺障害等級1級の場合、原則として成年後見人が必要となるでしょう。後遺障害等級2級または3級の場合、被害者の個別の状況によります。
【解説】
- 成年後見は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」ことが要件となります。つまり、意思能力を欠く場合です。
- 意思能力とは、意思表示などの法律上の判断において自己の行為の結果を判断することができる能力(精神状態精神能力)ののことです。
- 後遺障害等級1級の場合、通常は意思能力を欠いていることが多いです。
- 後遺障害等級2級又は3級の場合、意思能力を欠いているかどうかは被害者の個別の状況によります。
- Q成年後見制度を申立するデメリットは何ですか?
- A①金銭管理を厳密に行う必要があること、②家族以外の専門家が成年後見人として選任されてしまう可能性があることなどがあります。
【解説】
- 成年後見人は金銭管理を1円単位で行う必要があります。また、本人のため以外の出費は原則として認められません。さらに、家庭裁判所に1年に1回は報告をする必要もあります。そのため、金銭管理を厳密に行う必要があります。
- 家族ではなく弁護士司法書士などの専門家が成年後見人として選任される可能性があります。専門家が選任された場合、専門家の費用が必要になったり、専門家が厳密に財産管理を行ったりします。
- Q成年後見申立にかかった費用は相手に請求できますか?
- A成年後見開始の審判手続費用など成年後見申立にかかった費用について、必要かつ相当な範囲内で請求が認められることがあります。成年後見人の報酬についても損害と認められることがあります。
まとめ
- 後遺障害等級1級の場合、通常は成年後見人が必要です。
- 後遺障害等級が2級又は3級の場合、成年後見人が必要な場合と不要な場合があります。
- 成年後見申立により、①示談交渉が進みやすくなったり、②本人の財産の入出金が可能となったりする等のメリットがあります。
- 成年後見申立により、①金銭管理を厳密に行う必要があったり、②家族以外の専門家が成年後見人として選任されたりするデメリットがあります。