2015/07/06 更新高次脳機能障害

高次脳機能障害の逸失利益

横浜地裁 平成27年1月29日判決

自保ジャーナル1942号

今回紹介する裁判例は、高次脳機能障害の逸失利益(労働能力喪失率)について判断したものです。

被害者(事故時17歳)が、交通事故によって高次脳機能障害(後遺障害等級7級)の後遺症を負いました。

被害者側は、7級の後遺障害が認定されていることから、裁判の基準に基づき、56%の労働能力を喪失したと主張しました。

一方、加害者側は、被害者が事故後大学に進学し、優秀な学業成績を修めているから労働能力喪失率は基準よりも低いはずと主張しました。

裁判所は

  1. 程度は低いものの、易疲労性や認知・情緒・行動障害が残っていること
  2. 自らの努力や周囲の協力により学業成績を維持していること
  3. 学業と労働において求められる資質が大きく異なり、現在の症状からすれば、就職や就労継続に支障を来す蓋然性は高いといえること

を認定し、基準どおり56%の労働能力喪失率を認めました。

高次脳機能障害は一見してわかりにくい障害といえます。普通の生活を送っているように見えても、日常生活の様々な部分で不都合を強いられていることが多いです。被害者側としては、被害者に生じている事情をひとつひとつ丁寧に立証していくことが重要です。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。