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交通事故の注目の裁判例

2015/09/07 更新

高次脳機能障害による等級認定と裁判

京都地裁 平成27年3月25日判決

自保ジャーナル1948号

今回紹介する裁判例は、交通事故による外傷が原因で高次脳機能障害と判断された男性について、自賠責保険においては後遺障害7級と認定されていましたが、その後の訴訟においては、裁判所から後遺障害12級相当との判断を受けたという事案です。

事案の概要としては、52歳の男性が、バイクを運転し道路を直進中に、路外の駐車場に入るために対向車線から右折進入してきた被告運転の乗用車に衝突され、頭部外傷等の傷害を負い、くも膜下出血等で53日入院、174日通院して自賠責7級高次脳機能障害認定を受け、その後、提訴に及んだというものです。

今回の裁判では、後遺障害の内容・程度と過失割合が争点となりましたが、後遺障害の内容・程度について、裁判所は以下のとおり判断しました。

〈後遺障害の内容〉

  1. 原告は、本件事故により、頭部外傷、中頭蓋窩骨折を負い、急性硬膜外血腫を生じたこと、
  2. 事故から1年間の間、頭蓋内血腫の状態が持続していたこと、
  3. 本件事故による受傷後、G.C.S.=14程度の意識障害が3日間ほど持続したこと、
  4. 退院後、日常生活の中で注意障害や記憶障害を示す事象が現れたこと、
  5. 事故から1年後に実施された神経心理学的検査において、注意障害、記憶障害、前頭葉機能障害を疑わせる結果が出たこと、

に鑑みて、原告には高次脳機能障害の後遺障害が生じたものと判断しました。

〈後遺障害の程度〉

  1. 事故から2週間後に行われた神経心理学的検査の結果は高次脳機能障害を否定するものであったこと、
  2. 事故から1年後の神経心理学的検査の結果は、自発性の低下や抑うつが影響した可能性を否定できないこと、
  3. 原告は、復職後約2年間、職場や顧客とのトラブルなく稼働しており、退職後も、1人でバイクに乗り、目的をもって外出し、買い物、ATMの利用、給油、ダンス教室への参加等を支障なく行うなど、注意障害や記憶障害による社会生活上の支障は限られたものと解されること、
  4. 原告には、本件事故による外傷性頸部症候群に起因すると解される頭痛やめまい、頸部痛等が残存していたこと、

を総合的に判断すると、原告の後遺障害の程度は、自賠責で認定された7級ではなく、「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」として、後遺障害等級12級と認めるのが相当と判断されました。

このように、自賠責保険で認定されていた後遺障害等級よりも、その後の裁判において低い後遺障害等級が認定されてしまうケースがあります。特に、高次脳機能障害においては、相手方から、症状固定後の勤務状況・日常生活の状況などを理由として、自賠責保険で認定された後遺障害等級より低い後遺障害等級を認めるのが相当という反論が出ることがあります。訴訟提起を含み、どのように相手方と賠償交渉を進めるのかについては、高次脳機能障害の事案に詳しい知識と経験を有する弁護士と事前によく検討する必要があるといえるでしょう。

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