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交通事故の注目の裁判例

2015/09/17 更新

脊柱変形と労働能力喪失率

さいたま地裁:平成27年4月7日判決

自保ジャーナル1949号

今回紹介する裁判例は、20歳女子である被害者が、高速道路で停車中の乗用車の助手席に乗っていた際に、普通貨物車に衝突された事故についてのものです。

被害者は胸椎圧迫骨折等の傷害を負い、1年後に脊柱変形傷害で自賠責8級の後遺症認定を受けました。

本件では、被害者の後遺症による逸失利益について、労働能力喪失率が争点となりました。

被害者側は赤本通りの自賠責8級の労働能力喪失率である45%を主張しました。

一方、加害者側は、椎体変形によって後彎変形を生じたとしても、それらはある程度は脊柱の他の部位で代償される。そして、本件程度の変形では、被害者本人から局所の多少の痛みや脊柱のこわばりを訴えられることはあっても、そのために労働能力や日常生活能力が半分程度に低下するとは到底考え難いという医師の所見を証拠として提出して反論しました。

また、加害者側は、被害者が若年者であることから、今後、その症状が改善され、あるいは消失する可能性があることや、加齢による生理的な変形についても考慮すべきであると主張しました。

その上で、加害者側は、労働能力喪失率を、期間毎に徐々に減少させるのが相当であるとして、労働能力喪失率について、50歳までが10級相当の27%で、50~60歳が11級相当の20%、60~67歳が12級相当の14%と主張しました。

これに対して、裁判所は、実際に被害者においてはアルバイト及び大学での授業に支障を生じているのであり(被害者側は、大学の専攻を負担の軽い専攻に変更したこと、重い物を持つことができないためアルバイトをやめたこと、同じ姿勢で座っていることができるのは1時間程度あること等を具体的に主張しました。)、胸椎圧迫骨折後の脊柱の変形が器質的異常により脊柱の支持性と運動性の機能を減少させ、局所等に疼痛を生じさせうるものであることを考慮すると、被害者の労働能力喪失率は、8級に相当する労働能力喪失率45%と認めるのが相当であると判示しました。

脊柱の変形による逸失利益については、脊柱の運動障害による後遺症の場合と比較して、裁判でもその労働能力喪失率が争いになることが多く、実際に自賠責の目安としている労働能力喪失率よりも低く認定とされることもあります。

しかし、一方で、裁判例においても、自賠責通りの労働能力喪失率が認められることも多くあり、職業等によっては、自賠責よりも高い労働能力喪失率が認められることもあります。

そのため、脊柱の変形の場合の逸失利益の主張では、一般論を示すだけでなく、労働や日常生活において、どのような症状が原因となり、どのような支障が生じているかといった事情等を具体的かつ丁寧に主張・立証していくことが大事です。

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