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交通事故の注目の裁判例

2015/11/09 更新

男性の外貌醜状と後遺障害逸失利益

さいたま地裁平成27年4月16日判決

自保ジャーナル1950号

かつての後遺障害等級基準では、男性の外貌醜状は、女性の外貌醜状よりも軽い等級となっていました。これが平成23年に改正され、外貌醜状については男性・女性の区別がない等級が設定されるようになりました。なお、外貌醜状とは、手足以外で人目に触れる部分の人目につく傷跡のことです。

この裁判では、改正後の基準で後遺障害等級9級に相当する外貌醜状(口唇部に残存した5センチメートル以上の線状痕)を残した被害者(男性)が、9級に相当する35パーセントの労働能力喪失を喪失したとして逸失利益を主張しました。それに対して加害者は、外貌醜状は、労働能力に影響を及ぼす機能的障害ではないことや、被害者の貨物自動車運転手という職業においては、外貌が業務の遂行に影響を及ぼすようなものではないことを理由して、逸失利益が発生したこと自体を争いました。

たしかに、外貌醜状で後遺障害が残ったとき、加害者からは、労働能力の喪失や収入の減少につながるものではないとして、逸失利益の発生を争われることはよくあります。実際に裁判所が逸失利益の発生を認めない判決をしたという事例も多く報告されています。

ところが、この裁判例で、裁判所は、
「男性においても外貌醜状をもって後遺障害とする制度が確立された以上、職業のいかんを問わず、外貌醜状があるときは、原則として当該後遺障害等級に相応する労働能力の喪失があるというのが相当」であるとし、本件の被害者には、労働能力の喪失を否定するような特段の事情があるとまでいえないからという理由で、35パーセントの労働能力を喪失したと判断しました。逸失利益の請求を認めたことになります。

通常、逸失利益の請求を行う側が、業務にどのような支障が生じるのかなどの具体的な証明を行わなければならないと考えられています。一方、この裁判例は、外貌醜状の等級認定基準に男女の区別がなくなったことを理由として、この被害者は労働能力を喪失していないのだということを加害者側が証明しなければならないと判断したもので、いわば証明責任をどちらが負うかという点を逆転させたともとれます。

この裁判例の考え方が即座に一般化できるとは考えませんが、被害者の証明のハードルを下げたものとして評価できる裁判例であると考え、御紹介することとしました。

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