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交通事故の注目の裁判例

2015/11/16 更新

既往障害を有する場合の後遺症認定と訴因減額

さいたま地裁 平成27年3月20日判決

自保ジャーナル1950号

今回紹介する裁判例は、脊髄損傷による両下肢麻痺等の既存障害を有する48歳男子である原告が、車いすで移動中に一時不停止の被告乗用車に衝突され、首の痛みや両上肢の痛み・しびれが残存したという事案です。

裁判前の自賠責の認定では、原告には既存障害があり、その症状は加重障害とはいえず後遺症等級については非該当とされました。また、裁判において,被告は、既往障害により8割の訴因減額(人身損害の2割しか払わない)をすべきであると主張しました。

裁判所は以下の理由で、自賠責の判断とは異なり、14級9号の後遺症が残存していると認定し、また、既往症による訴因減額を否定しました。

まず、裁判所は、本件事故前の原告の状態につき、車いす利用者のテニス大会で上位入賞する等スポーツ競技に積極的に取り組んでいたと認定しました。

そして、首の痛みについては,継続的に通院して鎮痛・消炎薬であるロキソニン等の処方を受け、マッサージ等の消炎鎮痛治療を受けていたことから原告は首の痛みを継続的に訴えていたと思われること、その症状と整合する客観的な検査所見が存在すること、事故前には首の痛みはなかったこと、事故により一定程度の衝撃を受けたことが認められることからすると、本件事故との間に相当因果関係がある後遺障害と認められるとしました。

また、両上肢の痛み・しびれについては、原告が日常的に車椅子を使用するなかで、首の痛みをカバーしようとしたため、腕や手に過度に力が入り、筋肉の緊張が生じて、結果的に手のしびれにつながったと考えるのが自然かつ合理的であるとして、本件事故により発症した首の痛みが契機となって発症したもので、本件事故との間に相当因果関係がある症状と認められると認定しました。

訴因減額について、裁判所は、神経にはそれぞれ支配領域があり、脊髄損傷の場合、脊髄損傷の生じた高位(部位)以下に不全あるいは完全横断麻痺が生じる。本件既存障害は第9胸椎圧迫骨折による脊髄損傷で支配領域としてはT9にあたり、運動機能としては腹筋・傍脊柱筋以下に障害が残り,知覚機能としては臍より少し上の部分以下に障害が残るものであるので,頸椎や上肢に運動障害又は知覚障害を及ぼすことはないとしました。

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