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交通事故の注目の裁判例

2016/03/04 更新

死亡事件の慰謝料増額及び生活費控除率

福岡高裁 平成27年8月27日判決

自保ジャーナル1957号

今回紹介する裁判例は、青信号交差点を自転車で横断中、赤信号で侵入してきた加害者が運転する乗用車に衝突され死亡したという事案についてです。

本件事故発生直後から、加害者は、被害者が赤信号であるのにそれを無視して横断をしてきたと供述していました。

その加害者の供述が検察に影響を与え、刑事手続については、いったんは不起訴処分となり、捜査が終了することとなりました。

しかし、その後、被害者らが独自に本件事故の目撃者を探し出し、その目撃者の情報による捜査機関の再捜査の結果、被害者は青信号で横断しており、加害者が赤信号で侵入してきたことが明らかになりました。

裁判所は、

  1. 本件事故当時、加害者の視機能は相当程度低下しており自動車の運転には適しない状態であったことからそもそも自動車運転自体を差し控えるべきであったこと、
  2. 加害者の供述は単なる思い違いによるものではなく、意識的な虚偽供述でありその悪質性が顕著であること、
  3. 加害者の供述により被害者の名誉や遺族の心情が大いに害され、かつ、検察による不起訴処分をくつがえすために遺族が多大な労苦を被ることになったこと、
  4. 刑事裁判においても、その供述内容はあいまいで場当たり的なものが多く,加害者の本件事故と真摯に向き合っていない不誠実な対応によって遺族が被った精神的苦痛の大きいことにかんがみて、通常の高齢者の死亡事案と比べても、慰謝料を増額すべきである

として、被害者個人及び遺族を含めて合計計3000万円の慰謝料を認定しました。

生活費控除率については、一般的に年金収入については、通常より生活費控除率を高くする例が多いといわれています。

しかし、本判決では、被害者は死亡時68歳であって妻と二人暮らしで主に年金で生計を立てていたことに言及しつつも、持ち家であって家賃が不要であったことや、事故前は年金等による家計収入よりも相当程度少額の生活費で賄っていたことがうかがわれることからすると、生活費控除率は40%とするのが相当であると認定しました。

このように裁判所は、慰謝料については加害者が虚偽を述べていたことが判明した場合には、被害者の精神的苦痛が通常の事故の場合と比べても大きいとして増額する可能性がありますので、主張漏れに気を付ける必要があります。

また、生活費控除率については、一般論にとどまらず、事故前の被害者の生活状況が具体的にどうであったのかを把握したうえで主張をしていくことが重要です。

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