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交通事故の注目の裁判例

2016/03/22 更新

死亡慰謝料の増額

福岡高裁 平成27年8月27日判決

自保ジャーナル1957号

今回は、加害者の悪質性等から、被害者側の死亡慰謝料が増額された裁判例をご紹介します。

被害者(68歳 男性 年金受給者)は、青信号交差点を自転車に乗って横断していたところ、赤信号で交差点に進入してきた加害者運転の乗用車に衝突されました。被害者は、重症の胸部外傷の傷害を負い、外傷性ショックによりお亡くなりになりました。

その後、相続人である被害者の妻と子らの4名が訴訟提起したという事案です。

本件では、加害者の悪質性が強かったために、慰謝料を増額するかどうかが争点の一つとなりました。

損害賠償額算定基準(平成28年版・いわゆる「赤い本」)によると、死亡慰謝料の金額は、一家の支柱であれば2,800万円、母親・配偶者であれば2,500万円、その他は2,000~2,500万円という目安があります。なお、独身の男女、子供、現に職業に就いていない68歳以上の老齢者等は、上記でいう「その他」に該当します。

本件で第1審の裁判所は、加害者の不誠実な対応等から通常の高齢者の死亡事案と比べて慰謝料を増額するべきであるとして合計2,700万円の慰謝料を認めました。

これに対して、控訴審の本判決は、次のような事実を考慮して、本件事故による慰謝料を、相続人ら固有の慰謝料分も含めて合計3,000万円(被害者分2,150万円、妻分400万円、子らの分各150万円)と認定しました。

  1. 視機能が低下していた加害者による運転が有する危険性及びその本件事故との関連性
  2. 加害者は、本件事故後の捜査機関の事情聴取に対して、明らかに客観的事実と異なる事実を説明したところ、同供述は、単なる思い違いによる供述ではなく、被害者が赤信号で横断したと捜査機関に誤認させるためになされた意識的な虚偽の供述であると考えられ、その悪質性は顕著であること
  3. 被害者に本件事故の責任を転嫁する供述により被害者の名誉及び相続人らの心情が大いに害されたのみならず、真実発見のための情報収集活動を余儀なくされ、多大な労苦を被ることになったこと
  4. 刑事公判や本件での本人尋問を含めた加害者の不誠実な対応によって相続人らが被った精神的苦痛は大きいこと

死亡慰謝料の金額については、目安となる一定の基準額はあるものの、具体的な事情によって増減額されることがあります。

そのため、加害者の悪質性等の事情がある場合には、慰謝料の増額を求める主張を忘れずにする必要があります。

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