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交通事故の注目の裁判例

2016/04/10 更新

示談後に認定された後遺障害等級を前提とした賠償を命じた事例

東京地裁平成27年9月28日判決

自保ジャーナル1961号

今回は、示談後の異議申し立てにより新たな後遺障害等級が認定されたケースについて判断した裁判例をご紹介します。

原告(女性)は、自転車で進行中、路外から左折進入しようとしてきた被告運転車両に衝突され、右中指の欠損傷害、頸部痛及び頭痛等の神経症状で自賠責併合14級が認定されました。

原告は、「将来乙(原告)に本件事故を原因とする後遺障害等級14級を超える後遺障害が認定された場合は、それに関する損害賠償請求権を留保し、別途協議する。」という条項(以下「留保条項」といいます。)を含む内容の示談書を、被告側の保険会社と取り交わしました。 その後、原告の異議申し立てに基づき、右中指の傷害部分について、12級13号の後遺障害が新たに認定されました。

今回の裁判では、新たに認定された後遺障害を前提とした賠償の請求(14級を前提とする賠償金額との差額の請求)が認められるかがひとつの争点となりました。

原告側は、留保条項があることを主張して当然に差額の請求が認められることを主張しました。

被告側は、差額請求は示談により既に放棄されており、認められないと主張しました。

この点裁判所は、
「本件留保条項の文言からすれば、本件示談契約は、本件事故による原告の損害のうち、障害等級14級を前提とする後遺障害による損害および障害分の損害については確定的にその効力が生じているが、「障害等級14級を超える後遺障害による損害」に関する損害賠償請求権は本件示談契約後も留保されていると理解するのが自然であり、本件全証拠によっても上記解釈と異なる解釈を予定していたことをうかがわせる交渉経過等の事実は認められない」と判断し、原告の主張のとおり、差額の請求を認めています。

今回の事例では、留保条項があり、特に差額の請求がされないという交渉の経緯をうかがわせる事情もなかったため、差額の請求を認めたことは当然の認定であったといえます。

今回のポイントは、示談をするときには示談書の文言・条項によく注意していただきたいということです。示談書(免責証書)は、相手方の保険会社によって作成されることが多いです。そして、相手方保険会社の作成する示談書には留保条項のような条項は通常入っていません。例えば留保条項がないまま示談をした後に、差額や追加の請求をした場合に、今回の事例のように全ての請求が認められるとは限りません。(この点、最高裁昭和43年3月15日判決が、①示談契約が全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、②早急に少額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合においては、③その当時予想できなかった不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは当事者の合理的意思に合致するものとはいえない、と判断している部分が参考になります。)

示談をする際には、可能であれば、全ての損害が確定した時点で(後遺障害の認定や再手術の可能性など状況が変わる可能性がない状況で)、内容を専門家に相談した上で行うことが望ましいでしょう。

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