メニュー

交通事故の注目の裁判例

2016/09/20 更新

後遺障害認定後、復職した場合の労働能力喪失率

神戸地裁 平成27年9月3日

自保ジャーナル1965号

今回は、交通事故により胸髄損傷等から自賠責1級1号認定の後遺障害を残して復職した被害者につき、労働能力が85%喪失したと認められた裁判例をご紹介します。

本件は、交通事故によって胸髄損傷等の傷害を負い、345日入院して両下肢完全麻痺等自賠責1級1号後遺症を残したものの会社に復職した事案で、復職して働くことができていたことから労働能力の喪失率が大きな争点となりました。 原告は、本件事故間年度収入が539万7,220円である一方、復職直後の年収が505万4,125円と約6%の減収でしかなかったこと、裁判時には4年以上勤務していたこと、その間部署の変更も経験していたこと等の理由から、事務職での労働への影響は限定的であるとして労働能力の喪失率はせいぜい50%程度でしか無いという反論が被告からなされました。

この被告の反論に対し、裁判所は以下の理由を挙げて原告の労働能力喪失率が85%であると認定しました。

  1. 現場作業員への復帰が不可能であり、実際には超過勤務や出張が制限され、事務職に限定されていたこと
  2. 職場にバリアフリー化がされたものの、車椅子での移動を余儀なくされており、職場での体操、清掃、排尿に支障があること
  3. これらの事情に照らすと、原告の勤務は本人の努力と勤務先である訴外会社の理解・配慮により継続できていること認めるのが相当であること

労働能力喪失率は、後遺障害の等級に応じて14級の5%から1級の100%までの基準がありますが、この労働能力喪失率はあくまでも一応の目安としての基準となるに過ぎません。本件のように、自賠責1級の後遺障害認定をされたとしても、実際に働くことができているような場合、相手方は労働能力喪失率を争ってきます。本件のような場合には、復職前後の職場環境や労働状況などを丁寧に立証する必要があるといえます。

交通事故の注目の裁判例

ご相談から解決までの流れ