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交通事故の注目の裁判例

2016/11/14 更新

死亡事故の因果関係

神戸地裁 平成28年1月20日判決

自保ジャーナル1973号

今回紹介する裁判例は、対向車に衝突された63歳男性が右椎骨動脈血栓症で死亡したことについて、以下の理由で、事故との因果関係を認めたという事案です。

被害者は事故前から脳に動脈硬化症があり、その程度は高度に硬化しており、約70%狭窄の状態でもありました。

  • A医師は、右椎骨動脈が動脈硬化を起こしていたことを前提に、ストレスによる血栓の発生により死亡した可能性を指摘し、
  • C医師は、もともと糖尿病等に起因する動脈硬化が存在することを前提に事故による血圧上昇が関与した可能性を指摘しました。
  • D医師も、動脈硬化の存在を指摘上で、素因の関与が相当大きいとしました。

これらのことから、裁判所は,被害者の脳動脈硬化症が今回の死亡の原因となった右椎骨動脈血栓症の発生に影響しているといわざるをえないとしました。

また、被害者に精神的ストレスがかかったことについても、本件事故態様が、時速約40から50キロメートルで走行していた被害車両の右前角部と、時速約50から55キロメートルで走行していた加害車両の右前角部とが衝突して、被害車両が押し戻されてガードレールに衝突して停止したという事故態様であり、双方がブレーキをかける間もなく衝突に至っていること、被害車両の前部が大きく破損していることからすると、相当程度の衝撃が被害車両に加わったといえます。

そして、被害車両の右側後部座席に乗車していた被害者は、なんの前触れもなく上記衝撃を受け、衝突直後、「なんや」と叫んだり、今まで聞いたことがないような大きな声で、「痛い、痛い」などと叫びだしたという被害者の言動からも、被害者は、本件事故によって驚愕等の精神的ストレスがかかったといえるとしました。

これらのことから、裁判所は、被害者は事故以前から右椎骨動脈に動脈硬化があった状態で、本件事故による精神的ストレスにより、血圧の変化や血液凝固能の亢進が生じ、右椎骨動脈血栓症を発症したと認めるのが相当であるとして、因果関係を肯定しました。

なお、事故前にあった脳動脈硬化症について素因減額を50%した上で認定しています。

このように、事故と症状との因果関係が問題になる場合は、事故前の持病の内容や程度、医師の意見、事故態様や車の損傷状況から事故によるストレスの大きさ等を丁寧に立証していくことが重要となります。

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