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交通事故の注目の裁判例

2017/02/16 更新

夫を介護する79歳女子家事従事者の死亡逸失利益

前橋地裁 平成28年6月17日判決

自保ジャーナル1983号

今回紹介する裁判例は、夫を介護する79歳女子家事従事者の死亡逸失利益について判断したものです。

今回の裁判例では、夫を介護する79歳女子家事従事者の死亡逸失利益について、全年齢の女性の平均賃金を基礎にして算出するべきか、70歳以上の年齢の女性の平均賃金(こちらの方が金額が低くなります)を基礎にして算出するべきか、が争点の一つとなりました。

裁判所は、各証拠や裁判におけるすべての事情を考慮して、以下のように判断しました。

本件女性は、本件事故発生当時、大きな病気を患うことはなく、夫と同居して、一人で、炊事、洗濯及び買い物等の家事に従事していたこと、このほかにも、本件女性は本件事故発生当時に認知症患者の夫の身の回りの世話をして夫を介護して、夫が経営する店を代わりに経営するなどしており、さらに、子供二人のためにも食事を用意するなどして、家事に従事していたことを認めることができ、これらの事実からすると、本件女性は、生涯を通じて、全年齢の女性の平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性があったと認めることができる。

したがって、本件女性の死亡逸失利益の基礎収入は、全年齢の女性の平均賃金であると認める。

【コメント】

高齢女子家事従事者の逸失利益の算定にあたっては、基礎収入の評価が重要な争点となります。

家事従事者の死亡逸失利益については、原則として、死亡した年の全年齢女性平均賃金を基礎にして算出しますが、高齢者の場合には、年齢、家族構成、身体状況及び家事労働の内容等に照らし、生涯を通じて、全年齢の女性の平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められないときには、死亡した年の当該女性の学歴計・年齢別平均賃金を参照して、基礎とする収入額を減額されることが多くみられます。

もっとも、今回の判例の女性のように、家事労働の内容を重視して、全年齢の平均賃金を基礎に逸失利益が算出されることもあるため、裁判においては、年齢だけではなく、事故当時に、その者が行っていた家事労働の内容といった点も重要になってきます。

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