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交通事故の注目の裁判例

2017/03/08 更新

会社から労働者への損害賠償請求の制限

京都地裁 平成28年5月20日判決

自保ジャーナル1983号

今回は、労働者が起こした業務中の交通事故により会社が損害を被った(会社所有のトラックの損壊)として、会社から労働者に対し損害賠償を請求したが、その請求の範囲を1割に限定した裁判例をご紹介します。

本件のように、労働者の業務中の事故により会社が損害を被ったとして、会社から労働者に対して損害賠償請求をする事案は少なくありません。
しかし、このような請求は「信義則上相当な範囲に制限」すべきであり、諸般の事情を考慮した上で、請求の範囲を制限するのが裁判実務となっています。
本件においても、会社の請求をどの程度制限すべきかが主な争点となっていましたが、裁判所は、以下のような事情を考慮して、会社の被った損害(約684万円)の1割の請求を認めています。

※原告が会社、Aが労働者

  1. 原告は自動車を用いる貨物運輸業を営む会社であり、交通事故の発生はその事業に内在する危険であって、本件事故は、本件車両による貨物運搬作業中に発生したものであるから、危険が現実化したものといえること
  2. トラック交換費用は、原告が車両保険に加入することによって負担を回避し得た損害である(にも関わらず、保険に入っていなかった)こと
  3. 本件事故は、Aの脇見運転又は居眠り運転と解さざるを得ないが、本件事故以前の相当長時間の時間外労働が、運転中の注意力の低下や居眠りをもたらす可能性は否定できないこと。このような時間外労働は、使用者である原告において改めることが可能であったこと。
  4. Aの勤務態度は良好であったこと(過去に交通事故を起こしたことはなく、懲戒処分を受けたこともなかった)

他の裁判例も見ると、裁判所は、①事業の性格・規模、②施設の状況、③被用者の業務内容、④労働条件、⑤勤務態度、⑥加害行為の態様、⑦加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、⑧その他諸般の事情を考慮して、制限の程度を判断しています。

本件のように、労働者に大きい過失がある(居眠り又は脇見運転)事故においても、背景に長時間の時間外労働等がある場合は、会社から労働者に対する損害賠償請求は、かなり制限されることになります。会社としては、裁判上、このような制限がされ得ることを考慮した上で、話合いによる解決を検討しても良いかもしれません。

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