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交通事故の注目の裁判例

2017/04/12 更新

近親者固有の慰謝料

徳島地裁 平成28年8月25日判決

自保ジャーナル1985号

この裁判例は、片側一車線の道路を横断していた自転車と乗用車が衝突し、自転車に乗っていた被害者(女性)が頸髄損傷の傷害を負ったという交通事故に関するものです。

被害者には、四肢麻痺等で1級1号の後遺障害が残りました。

争点は多岐にわたりますが、ここでは、近親者の慰謝料についてお書きします。

この裁判例の事案では、被害者の夫が、夫自身の慰謝料が認められるべきであると主張しましたところ、裁判所は、夫固有の慰謝料として600万円が相当であると判断しました。

法律には、被害者が死亡したときに近親者の慰謝料を認める趣旨の条文があります(民法711条)。判例では、これを進めて、死亡に匹敵するような精神的苦痛を受けた場合には、近親者にも慰謝料請求権を認めるとされており(最判昭和33年8月5日)、現在の実務でもそのように考えられています。最近の傾向としては、被害者の介護を要する後遺障害等級が認定されたときは、親族固有の慰謝料が認められる傾向にあると指摘する文献があります(「交通事故損害額算定基準」(いわゆる(青い本))。

問題はその額ですが、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤い本」)などでも、明確な基準は示されていません。そのため、過去の裁判例を参考にしつつ、この件で近親者はどれほどの苦痛を被ったのかを具体的に主張立証していくことが求められます。

過去の裁判例で考慮された事情としては、

  • 被害者の介護について老齢に至るまで中心的な役割を担当することを強いられること(被害者(23歳)の両親)
  • 退職して介護に当たったこと(被害者(18歳)の親)
  • 被害者の暴言・暴力にさらされていること(被害者(20歳)の親)

等が挙げられています。

この裁判例で、裁判所がどのような事情を考慮して夫固有の慰謝料として600万円が相当であると判断したのかは全く分かりませんが、とりわけ介護を要する後遺障害が残った事例では、近親者の慰謝料額が相当認められるべきであることを基礎づける具体的な事情を主張立証する活動が求められます。

(文責:弁護士 佐藤 寿康

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