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交通事故の注目の裁判例

2017/10/03 更新

遷延性意識障害と将来医療費

札幌地裁 平成28年3月30日判決

自保ジャーナル1991号

今回は交通事故により、遷延性意識障害の症状を残した被害者について、将来医療費を認めた裁判例を取り上げます。

本件では、30歳の被害者が道路を横断中に自動車に衝突され、被害者は脳挫傷等の傷害を負い、その結果遷延性意識障害となり、後遺障害等級1級1号が認定されました。裁判での争点は複数に及びますが、今回は、将来医療費の争点について解説します。

本件では、被害者は、症状固定後も入院を続けており、少なくとも月額平均70万円(年額840万円)ほどの医療費が生じているとして、平均余命までの将来医療費を請求しました。なお、本件では、被害者は、症状固定後は、国民健康保険法に基づく保険給付及び重度心身障害者医療費助成条例に基づく助成を受けており、入院に伴う医療費を支払っていないという事情がありました。

これについて、裁判所は、以下のような判断をしました。

  1. 被害者が引き続き平均余命の期間に渡って入院する必要があり、本件事故の損害として、年額840万円の医療費が生じることになったことを認める。
  2. 被害者は、症状固定後は、国民健康保険法に基づく保険給付及び重度心身障害者医療費助成条例に基づく助成を受けており、入院に伴う医療費を支払っていないが、その後は、同様の保険給付等の存続が確実であるということはできないから、損害から控除すべき保険給付等は、当初の3年のもの(※注:症状固定から本件訴訟までの期間)であるというべきである。

として、3年分を除いて、原告主張の将来医療費の請求を認めました。

【コメント】

症状固定後の治療費は、原則として損害とは認められませんが、症状固定後も治療を施さないと症状が悪化するおそれがある場合には、例外的に、症状固定後の治療費も損害として認められることがあります。
本件は、遷延性意識障害の状態にあり、今後も治療の必要性が高いことから、将来医療費が認められています。
また、国民健康保険法に基づく保険給付といった社会保障給付が行われている場合であっても、将来に渡ってそのような制度が続く保証はないことから、将来医療費の認定に関しては、そのような社会保障給付については、考慮されないことがあります。

(文責:弁護士 前田 徹

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