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交通事故の注目の裁判例

2017/11/16 更新

自賠責後遺障害等級認定と裁判上の逸失利益

大阪地裁 平成28年7月15日 判決

自保ジャーナル1985号

今回は、61歳自営調理師男子(以下、「被害者」と言います)の9級左耳難聴は高度難聴までに改善しているとして逸失利益を労働能力喪失率35%の7割で認めた事例をご紹介します。

被害者は、平成24年10月9日に交差点を自転車で横断しようとしていた際に自動車に衝突されるという交通事故に遭い、それが原因となって左耳難聴を患い、自賠責9級9号の後遺障害認定を受けました。通常、自賠責9級9号の後遺障害の認定を受けますと、35%の労働能力が喪失したものとして扱われます。

しかし、裁判所は、以下のとおりの理由から、被害者の労働能力は35%の7割程度喪失しているものと認定し、それを前提として後遺障害逸失利益を算出しました。

「原告の所得は、…多数の従業員の働きにより得られている部分も相当あるというべきである…また、原告の左耳は平成24年10月31日時点では聾のレベルに達していたが、その後平成25年3月11日及び平成26年7月2日時点ではわずかではあるが高度難聴のレベルに改善していること、骨導値からすれば左耳も完全に聞こえない状態とまではいえないこと、原告が症状固定後も本件事故以前と同様に店の厨房において調理を行うことができていたことが認められ…さらに、原告の所得は本件事故前年である平成23年に比べ、平成24年、平成25年と徐々に減少しているが、原告の売上金額から売上原価を差し引いた金額は本件事故以前から減少し始めていること及び本件事故後専従者給与が増額されていることなどからすれば、上記所得金額の減少のすべてが本件事故によるものと評価することもできない」

通常、交通事故後に後遺障害が認定された場合、相手方保険会社と賠償額の交渉をする際は、「後遺障害別等級表・労働能力喪失率」を基礎に労働能力を決定して賠償額を算定することが多いです。

しかし、保険会社との交渉段階で示談がまとまらず訴訟を提起した場合、原告の方で具体的な事実を挙げた上で、労働能力がどれほど減少しているかということを立証する必要があります。

今回ご紹介した裁判例のように、後遺障害が認定された後の事情からすると「後遺障害別等級表・労働能力喪失率」に記載されている労働能力喪失率ほど労働能力が喪失していないと認められた場合には、裁判所が判断した喪失率を元に後遺障害逸失利益が算出されることになります。

(文責:弁護士 加藤 貴紀

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