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交通事故の注目の裁判例

2017/11/17 更新

27歳女子自賠責非該当だった左肩関節の機能障害について、裁判で後遺障害12級が認定された事例

福井地裁 平成29年3月3日判決

自保ジャーナル1999号

今回は、27歳の女性が交通事故に遭い左肩を受傷した事案で、①自賠責で非該当であった左肩関節の機能障害について、後遺障害が認められるか、②逸失利益算定の基礎となる年収額、について判断した裁判例をご紹介します。

被害者(27歳 女性 美容師)は、乗用車を運転して信号待ち停車中に、被告乗用車に追突されました。被害者はこの事故により、腰部挫傷、左手挫傷、左肩棘上筋腱深層部損傷等の傷害を負い、約1年8ヶ月間通院しました。

長期にわたる通院後も、腰や左手の痛み、左肩の動かせる範囲に制限が残ってしまったことから、被害者は後遺障害認定の申請を損害保険料率算出機構(交通事故による後遺障害の認定を行う機関です。)に行いました。結果は、腰と左手の痛みについては14級の後遺障害が認定されたのですが、左肩の可動域の制限については、後遺障害は認められませんでした。

そこで、被害者は、左肩の可動域制限についても後遺障害を残したとして、訴えを提起しました。

裁判所は、①後遺障害認定につき、「原告は、本件事故により左肩に棘上筋腱の深層部の損傷を負い、これを原因とする痛み等が原因で長期間にわたって関節を十分に動かせずにいたところ、時間の経過とともに左肩組織に癒着形成が進み、間接包の線維化により関節拘縮が生じ、これが原告の左肩の可動域制限をもたらした」ことから、「症状固定日・・・において、左肩関節の可動域が健側の4分の3以下に制限される後遺障害が生じたと推認することができ」るとして、左肩関節可動域制限を併せて「原告の後遺障害は併合12級に相当する」と併合12級後遺障害を認定しました。

②後遺障害逸失利益の基礎収入については、「原告は、事故の前は美容師としてフルタイムで稼働しており、平均月額20万4559円の給与収入を得ていたこと、他方で、父と二人暮らしをしており、家事に充てる時間はさほど多くなかったことが認められるから、」女性労働者の全年齢平均年収「354万7200円をそのまま逸失利益とするのは相当でなく、家事労働分の逸失利益は、その7割程度とみるべきである」等から、「原告の事故前の実収入額は、計算上の家事労働の対価と同程度となるから、・・・原告の逸失利益を算定するにあたっては、上記の実収入額を基礎とするのが相当である」と認定しています。

通常、損害保険料率算出機構から出された後遺障害認定結果に基づいて、損害賠償の交渉が行われていきます。しかし、今回ご紹介した裁判のように、事案によっては裁判で後遺障害の認定が変わることがあります。後遺障害の認定結果が出た後にも、当該結果の妥当性について、専門家と検討する必要がある事案もあります。

また、後遺障害の逸失利益を計算する際の基礎とする収入については、原則として、働きながら家事をやっている方は実際の給料所得と家事の相当対価とを比べて高い金額が採用されます。どちらの金額を基礎とするべきかは、正確に計算した上で判断する必要があります。

(文責:弁護士 大友 竜亮

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