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交通事故の注目の裁判例

2017/12/05 更新

自賠責が認定した高次脳機能障害(7級)を裁判所が否定した事例

名古屋地裁 平成29年9月19日判決

自保ジャーナル2002号

今回は自賠責が認定した高次脳機能障害の後遺症を、裁判所が否定した事例をとりあげたいと思います。

被害者が同乗していた車両に大型貨物自動車が衝突し、被害者は頭部挫傷、脳震盪などの障害を負いました。症状固定後、自賠責から高次脳機能障害(7級)を含め、併合6級の後遺症が認定されていました。

しかし、裁判所は「高次脳機能障害が残存したと認めることはできない」と判断しました。裁判所がどのように結論を導き出したのか、順に見ていきましょう。

まず、裁判所は高次脳機能障害が残存しているかどうかについて

  • 頭部外傷の画像所見の有無
  • 事故後の意識障害の存在
  • 臨床症状としての事故後の認知障害、人格変化等の有無、程度

などを踏まえて判断すべきとしています。

その上で本件では、以下のように各要件について、詳細な認定を行っています。

(頭部外傷後の画像所見の有無)
頭部外傷の画像所見がなく、その後も脳の萎縮等の所見がみられない。

(事故後の意識障害の存在)
事故から39時間後には意識障害がなくなっており、高次脳機能障害を残すとされる程度でない。

(臨床症状としての事故後の認知障害、人格変化等の有無、程度)
物忘れの訴えの記録があるのが事故から3か月経過後である上、入院中からブログを更新しており、記憶障害が生じたとは言えない。被害者が主張する人格変化(怒り易くなった・物忘れが激しい)についても事故から相当時間が経過した後のものであり、事故による脳損傷が原因と考えるのは難しい。神経心理学的検査(知能検査)が事故から2年後に実施されていることや検査の結果も外傷性の高次脳機能障害があるとするには消極的とされており、事故後の被害者の知的水準が著しく低下したといえる証拠もない。

裁判所は以上のように判断して高次脳機能障害の存在を否定しました。

裁判所は自賠責による後遺障害の認定には拘束されません。もちろん、多くの場合は自賠責の認定結果と同じような判断になることが多いですが、被害者側としては認定結果を詳細に検討し、裁判に踏み切るべきかどうかは慎重に判断することが必要です。

(文責:弁護士 川﨑 翔

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