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交通事故の注目の裁判例

2018/01/09 更新

11級脊柱変形等併合8級後遺障害を残す被害者の逸失利益を15年間14%の労働能力喪失で認定した事例

神戸地裁 平成28年3月17日判決

自保ジャーナル1979号

今回は、19歳塗装業勤務の男性が交通事故により腰椎骨折、腸骨骨折、鼻唇部挫創の傷害を負い、後遺障害等級第9級16号の外貌醜状、第11級7号の脊柱変形、第14級9号の下肢神経症状等から併合第8級の認定がでていた事案で、後遺障害逸失利益を労働能力喪失14%、喪失期間15年間で認定した裁判例をご紹介します。

本件で争点となった事項は過失割合などいくつかありますが、ここでは、後遺障害逸失利益に関する裁判所の判断についてご説明します。

裁判所は、次のような事情を考慮して、「後遺障害による労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は15年とするのが相当である。」と判断しました。

①16歳の時から塗装工あるいは電気工として稼働しており、鼻下部の線状痕が労働能力に影響を及ぼす程度は大きくない、②腰椎圧迫骨折が認められ11級7号に該当すると判断されたが、胸腰椎部運動障害については、可動域制限を生じるものではなく、後遺障害には該当しないこと、③本件事故後から継続して腰部及び左下肢の痛み等を訴えており、原告の職歴や作業内容に照らせば、腰部及び左下肢の痛み等が労働能力に及ぼす影響は軽視できないこと、④他方、原告は現在日給1万2,000円で稼働していることなどの事情を合わせ考慮して、裁判所は上記のとおり判断しました。

逸失利益の算定は、労働能力がどの程度低下したか、症状による業務への影響の程度、収入の変化があるか、将来の昇進等の不利益の可能性、日常生活の不便等の事情を考慮して決めるのが一般的です。

労働能力喪失率については、後遺障害等級第8級は45%、11級は20%、14級は5%というように後遺障害等級ごとに参考となる数値があります。これを基準として、被害者の職業、年齢、後遺症の程度、実際の収入の変化等の事情を考慮して喪失率を決めることになります。

労働能力喪失期間については、症状固定日から原則として67歳までの期間で算定します。ただし、被害者の年齢や職種、後遺障害の具体的症状等の事情を考慮して喪失期間を判断することもあります。

今回の裁判例のように、醜状痕や、脊柱変形による後遺障害等級認定の場合には、労働能力喪失率、喪失期間を争われることが多いです。一般的に、醜状痕や、脊柱変形による後遺症の場合、他の症状と比べて、労働能力に与える影響が小さいと考えられているためです。労働能力喪失率や、喪失期間が争われた場合には、上記に記載した考慮要素を検討して、後遺症により労働能力が低下していることを具体的に主張する必要があります。

(文責:弁護士 今村 公治

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