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交通事故の注目の裁判例

2018/01/16 更新

自賠責14級9号の後遺障害の逸失利益を10年間5%で認めた裁判例

横浜地裁 平成29年6月29日判決

自保ジャーナル2005号

今回は、自賠責14級9号の後遺障害を残す、女性美容師の逸失利益を労働能力喪失期間10年間、労働能力喪失率5%で認めた裁判例をご紹介します。

被害者(女性 美容師)は、平成26年8月、乗用車を運転して停車中に、乗用車に追突され、頸部痛等の傷害を負いました。

その後、被害者は、6か月通院し、頸部・右上肢の神経症状について、自賠責の後遺障害等級14級9号が認定されました。

本件では、争点の1つとして、逸失利益が争われました。

原告は、頑固な神経症状が残存しているとして、労働能力喪失期間10年、労働能力喪失率14%を主張しました。

被告は、症状固定後の仕事の内容、収入の変化が立証されていないとして、労働能力喪失期間を2年と主張しました。

裁判所は以下のとおり、判断して、労働能力喪失期間を10年と認定しました。

  1. 原告の美容師という職業、平成29年2月21日の陳述書作成時点での原告の症状は、櫛やハサミを自在に使えず、意識していないと道具を落としてしまうような状況であること等に鑑みれば、外傷性の異常所見は認められない神経症状ではあるが、労働能力喪失期間は、原告の主張するとおり、10年とする

赤い本には、「むち打ち症の場合は、12級で10年程度、14級で5年程度に(労働能力喪失期間を)制限する例が多く見られる」と記載があります。確かに実際の示談交渉や裁判例においても、むち打ち症による自賠責14級9号の神経症状の場合、後遺障害に基づく労働能力喪失期間を5年ないしそれ以下に制限する例が多いように思います。

もっとも、後遺障害はそもそも永残性を前提として認定されているですので、安易に喪失期間を10年ないし5年とすることは慎重にすべきという見解もあります。例えば、症状固定後相当期間が経過しているのに改善の兆候がない場合にまで喪失期間を限定するのは妥当ではないと考えられます(平成19年赤い本下巻講演録81頁)。

本件でも、むち打ち症による後遺障害として、労働能力喪失期間は5年程度と判断されてもおかしくない事案でした。

しかし、事故から2年半が経過した時点においても、頑固な症状が残存し、利き手に支障を来していたこと、美容師という職業を前提として、櫛やハサミを自在に使えないという現実的な問題を具体的に主張したことで、10年間の労働能力喪失期間の認定につながったものと考えられます。

実際の賠償実務の現場においては、むち打ち症による、自賠責14級9号の後遺障害において、労働能力喪失期間を5年を超えて認められるケースはまだまだ多くないと思われますので、今回、参考になる事例としてご紹介させていただきます。

(文責:弁護士 粟津 正博

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