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交通事故の注目の裁判例

2018/02/13 更新

70歳代女子の腰部脊柱管狭窄症等の既往症は身体的素因とは認められないと寄与度減額を否認した事例

神戸地裁 平成29年5月26日判決

自保ジャーナル2005号

今回は70歳代女子が交通事故に遭い腰部脊柱管狭窄症等の既往症は身体的素因とは認められないと寄与度減額を否認した裁判例をご紹介します。

平成24年4月被害者である原告(70歳代女性)は乗用車を運転して交差点を走行中一時停止道路から右折進入の被告乗用車に衝突されてしまいました。そのため原告は交通事故により人身損害・物的損害を受けたとして被告に対し不法行為ないし自賠法3条に基づく損害賠償を請求しました。

しかし原告は腰部脊柱管狭窄症の既往症を有していました。そのため被告は既往症があり本件直前まで継続的に治療を受けており本件事故後も既往症の治療が継続していたから既往症による大幅な寄与度減額がされるべきであると主張しました。

裁判所は原告について
平成23年7月から平成27年4月にかけてBクリニックに通院
平成23年7月
変形性腰椎症両変形性膝関節症顔面両膝打撲捻挫の診断
左膝痛腰痛

平成23年8月
両膝関節炎の診断
両膝痛

平成23年12月
腰部脊柱管狭窄症の診断

平成24年3月
腰部頸部痛

の診断を受けたり痛みを訴えていたことを認定しました。

その上で裁判所は原告の本件事故前の傷病は年齢相応のものがほとんどであり身体的素因とまでは認めることはできない。また原告の本件事故前の症状も年齢相応の程度を超えるものであるか明らかではないとして原告の既往症を理由に本件事故による原告の寄与度減額を認めるのは相当でないと被告の主張を否認しました。

寄与度減額とは被害者の事情により損害金を減額することが「損害の公平な分担」に適うような場合に損害を減額させる理論です。

身体的素因を理由に寄与度減額が認められるためには裁判所は「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしてもそれが疾患に当たらない場合には特段の事情の存しない限り損害賠償の額を定めるにあたり斟酌することはできないと解するべきである」と判例で示しています。これは人の体格や体質は個体差が当然に予定されていることを理由にしています。

そのことから本件の裁判所の判示を確認すると「本件事故前の傷病は年齢相応のものがほとんどであり身体的素因とまでは認めることはできない」「本件事故前の症状も年齢相応の程度を超えるものであるか明らかではない」としています。よって裁判所が原告の腰部脊柱管狭窄症等の既往症について年齢相応のものと考え身体的素因を理由に寄与度減額を認めなかったことが読み取れるかと思います。

被害者の方は様々な既往症を抱えている方が多くいらっしゃいます。保険会社は被害者の方に「既往症があるからそれが痛みの原因でしょう」等と減額を迫ります。しっかりと被害者の方の既往症が寄与度減額されるものでないことを主張することが大事であることを再認識することとなった裁判例でした。

(文責:弁護士 根來 真一郎

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