メニュー

交通事故の注目の裁判例

2018/03/27 更新

14級9号の後遺障害が残った被害者について10年間7パーセントの後遺障害逸失利益を認めた事例

東京地裁 平成29年9月27日判決

自保ジャーナル2009号

30歳ころの男性が自動車を運転して赤信号にしたがって停止していたところ、自動車に追突されたという事故です。

被害者には頭痛の症状が残り、自賠責の後遺障害等級認定手続で14級9号の後遺障害が残ったと認定されました。

この裁判で争点となった事項はいくつかありますが、ここでは、後遺障害逸失利益を中心にお書きします。

被害者は、67歳まで労働能力喪失率20パーセントで算出した後遺障害逸失利益が認められるべきであると主張しました。これに対し、裁判所は、被害者の主張のとおりには認めませんでしたが、10年7パーセントで算出した後遺障害逸失利益を認定しました。

後遺障害逸失利益の判断において、裁判所は、次のことを指摘しました。

  • 被害者の職業は国内線のパイロットである。
  • パイロットはフライト時の気圧の変化の影響を受けやすく、頭痛の後遺障害は集中力や緊張感を要するパイロットの業務に与える影響は小さくないと考えられる。
  • 他方、被害者の症状は客観的な医学的所見に乏しいところがある。

14級9号の後遺障害が残った事案では5年5パーセントで後遺障害逸失利益を算定する例が多いです。しかし、本来、労働能力喪失期間は残った具体的症状に応じて考慮すべきですし、労働能力喪失率も、被害者の年齢、職業、残った症状の部位、程度などに応じて考慮すべきものです。この事案では、被害者に残った症状が被害者の業務にどのような支障を生じさせるかという点について被害者の行った具体的な主張立証がある程度奏功して、10年7パーセントの認定がされたという点で参考になると考え、ご紹介する次第です。

治療費についてもお書きします。被害者は、事故から2年10か月にわたり治療を継続し、約540万円の治療費を任意保険会社が支払いました。裁判所は、通院期間中、症状の悪化も改善も著明には認められないとして、症状固定は遅くとも事故から6か月後であり、賠償の対象となる治療費は約105万円であると判断しました。差額の約435万円は、他の損害費目の既払いとして扱われます。専ら賠償のことを考慮すれば、長い治療期間にも考慮の余地があるといえます。少なくとも、任意保険会社が内払を行っても、そのとおりの治療費・治療期間が認められるとは限らないということも、この裁判例は教えてくれます。

(文責:弁護士 佐藤 寿康

交通事故の注目の裁判例

ご相談から解決までの流れ