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交通事故の注目の裁判例

2018/03/28 更新

自営業者について事故前の収入を認定することができないとして後遺障害逸失利益が否定された事例

神戸地裁 平成29年9月8日判決

自保ジャーナル2010号

本件は併合12級の後遺障害を残した被害者(症状固定時45歳・自営業)について、裁判所が「本件事故前の収入を認定することはできない」「将来の転職や収入増はあくまで可能性に過ぎず、原告に男性全学歴全年齢平均賃金の収入を得る蓋然性があると認めることはでき」ないと認定し、後遺障害逸失利益を否定した事例です(当時の男性全学歴全年齢平均賃金は472万6,500円でした。)。

被害者は、以前からルアー(釣具)の製造販売業を営む個人事業主であり、以下のような事情がありました。

  • 帳簿を作成しておらず、事故前の3年間確定申告をしていない。
  • 事業所を家賃月額4万3,000円で賃借していた。
  • 事故後、507日間、ルアーの製造販売を休業していた。

被害者側は納品書や領収書、通帳、尋問等によって、ある程度の収入があったことを明らかにしようとしましたが、裁判所は「売上高や営業利益は判然としない」「経費が売上高を上回るいわゆる赤字の状態が続いていたことが窺われる」と認定しています。

個人事業主の場合、確定申告をせず納税をしていなかったという事情は当然のことながら、年収の認定において極めて不利に作用します。 今回の裁判所が示しているとおり、売り上げや営業利益を的確に証明する証拠がないためです。

もちろん、確定申告をしていなかったという事情だけで、収入がなかったと判断されるわけではありませんが、生活状況や支払状況について詳細な立証を行い、どの程度の年収があったのかを丁寧に主張していく必要があります。例えば、世帯の中で収入を得ていたのは被害者のみであり、その収入で家族が暮らしていたというような事情があれば、収入が全くなかったという認定にはなりにくいでしょう。

なお、上述のとおり、後遺障害逸失利益は否定されましたが、固定経費として支払っていた事業所の家賃(月額4万3,000円)の休業日数分(507日)は休業損害として認定されています。

(文責:弁護士 川﨑 翔

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