2018/04/03 更新脊髄損傷

被害者の後遺障害を随時介護として日額4,000円で将来介護費用を認めた事例

神戸地裁平成29年3月30日判決

自保ジャーナル1999号

今回は、事故により四肢麻痺等の後遺障害が残存する被害者について日額4,000円の将来介護費用が認められた事例をご紹介します。

40代の男性がオフロードコース内でバイクを運転していたところ、加害者のバイクに正面衝突されたという事故です。

被害者は、本件事故により、頚髄損傷、第6頚椎骨折等の傷害を負い、治療を継続しましたが、頚髄損傷の程度が高度であるため、上肢不全麻痺、下肢完全麻痺、膀胱直腸障害などの後遺症が残存しました。

本件で争点となった事項は過失割合などいくつかありますが、ここでは、将来介護費に関する判断についてご説明します。

被害者は、残存する後遺障害は自賠法の後遺障害等級1級または3級に相当するものであると主張し、将来介護費用として日額4,000円の39年分を請求しました。

これに対し、裁判所は、被害者の主張のとおりに認めました。被害者の将来介護費用に関して、裁判所は、被害者の怪我の内容、生活状況等を具体的に認定したうえ、概ね次のような判断をしました。

  • 後遺障害の内容及び程度、生活状況、及び介護状況に照らせば、被害者は、身の回りの動作について、随時介護を要する状態にあると認めるのが相当である。
  • 本件事故による後遺障害のために、身の回りの動作について随時介護を要する状態にあることや、訪問看護費用として月額約4万5,000円を自己負担している事実が認められること、後遺障害の内容・程度、介護の内容・程度を総合的に考慮すると、将来の介護費用は、近親者による将来の介護費用として日額4000円×365日を基礎とし、平均余命39年間に対応するライプニッツ係数17.017を乗じた2,484万4,820円とするのが相当である。

症状の程度により必要性が認められた場合(重篤な後遺障害が残存した場合)には、将来の介護費用を損害として請求できることがあります。

将来介護費は賠償額が高額になりやすいので、裁判で争いになりやすい損害費目です。常時介護か随時介護か、在宅介護か施設介護かなど、事情によって賠償額に大きな差が出るため、慎重に検討する必要があります。

一般的に、常時介護を必要とする場合の将来介護費の基準は、職業付添人が必要な場合には実費全額、近親者が介護する場合には日額8,000円程度とされています。また、随時介護を要する場合には、介護の必要性の程度に応じて事案ごとに適正な介護費を判断するのが一般的です。

本件は、在宅介護であり、被害者の後遺障害の内容、程度や、生活状況等の諸事情から、随時介護を要する状態にあると認定したうえ、日額4,000円で将来介護費を算定しています。

将来の介護費用は、原則として、被害者の平均余命までの期間について請求することができます。なお、将来もらえる金額を現時点で請求することになるので、将来介護費を算定する際には中間利息控除をすることになります。

(文責:弁護士 今村 公治

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。