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交通事故の注目の裁判例

2018/04/05 更新

61歳男子で、家事従事による休業損害を賃金センサス女子平均の6割を基礎に1か月間5割の休業割合で認めた事例

横浜地裁 平成29年9月28日判決

自保ジャーナル2010号

今回は、事故により頸部痛、両手・下肢のしびれ、耳鳴りの症状が残存する61歳の男性について、家事従事者としての休業損害が、賃金センサス女子平均の6割を基礎に1か月間5割の割合で認められた事例をご紹介いたします。

本件事故は、61歳男性の被害者が青信号交差点を歩行横断中、対向して右折しようとしていた加害乗用車に衝突されて受傷したという事故です。

被害者は、本件事故により頸部痛、両手・下肢のしびれ、耳鳴りの傷害を負い、約5年4か月間通院し治療を行いました。

本件で争点となった事項は症状固定時期、後遺症の残存等もありますが、ここでは休業損害に関する判断についてご説明致します。

被害者は、本件事故当時、88歳の母親及び妹と同居しており、事故から約6年後の母が死亡するまで家事及び介護をしていたことから、62歳男性の平均賃金である468万9,300円(日額1万2,847円)を基礎収入として、実通院日数365日につき休業損害が発生したとして、468万9,155円を請求しました。

これに対し、裁判所は、母親が介護認定を受けたのは、本件事故約8か月後に骨折をした後であり、それ以前に介護の必要があったことを認めるに足りる客観的な証拠はないとしました。

一方、被害者が50歳ころから無職となっていたことや、妹は稼働しているなど同居家族の状況からすると、本件事故当時、被害者が母親及び妹のために家事、母の生活介助等を行っていたことが推認されるとしました。

ただし、被害者の供述によっても、母親も食事の後片付け等、一定の家事を行っていたことが窺われ、被害者が通常の主婦業と同等の負担を負っていたとは考えにくい。また、本件事故による症状が受傷8日後には医師によりいったん治療終了とされる程度の比較的軽度の症状であり、その後一カ月以上通院がないことからすれば、家事についても本件事故直後に限定的な支障があったにすぎないとして、基礎収入を賃金センサスの女性全年齢学歴計平均賃金の6割、休業期間を1ヵ月、平均休業率を5割として休業損害を認めました。

通常、交渉段階では、男性の家事従事を原因とした休業損害の請求は認めてもらえないことが多いです。

しかし、本件のように事故当時の家庭の状況、同居家族の健康状態や稼働状況、行っていた具体的な家事内容や家族との分担割合、受傷の程度等、具体的な事情にそって主張した場合は、男性においても家事従事を原因とする休業損害が認められることがありますので、具体的に主張していくことが重要かと思います。

(文責:弁護士 小林 義和

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