2018/05/25 更新過失相殺

ライトで被告者の接近に気づいた等で左後方から衝突された青信号横断中の原告歩行者に5%の過失を認めた

さいたま地裁 平成29年9月21日判決

今回は、青信号横断中に左後方から自動車に衝突された歩行者が、自動車の接近に気づくことができたとして5%の過失が認められた裁判例についてご説明いたします。

原告は平成27年3月26日午後8時頃、埼玉県川口市内の信号交差点道路の直近を青信号で横断歩行中に、左後方から右折してきた被告運転の乗用車に衝突され、右第2、3中足骨・立方骨骨折の傷害を負いました。その後、原告は約6か月通院し、症状固定後、右足部痛から自賠責14級9号後遺障害認定を受けました。そこで原告は、既払い金157万7,011円を控除して、556万7,316円を求めて訴えを提起しました。

本件で被告側は、歩行者信号が赤に変わっていた、原告が車の接近を気づき回避することができたとして、50対50の過失を主張していました。

信号機の設置されている横断歩道を歩行者が青信号で横断中に、青信号で走行してきた右折中の車と衝突した場合の過失割合は、基本的には歩行者が0で、右折車が100となります(別冊判例タイムズ38【12】)。車は信号に違反しているわけではありませんが、歩行者も青信号に従って横断しているため、車は、横断歩道によって横断しようとする歩行者がいないことが明らかである場合を除き、横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行し、又は、横断しようとする歩行者があるときは一時停止する義務があるため(法38条1項)、原則として過失割合が歩行者0対車100とされています。

ところが本件で裁判所は、下記に記載するような理由から、歩行者に5%の過失を認めました。

「原告は、本件自動車と衝突するまで、本件自動車が右折進行してきていることに気が付いていなかった。本件自動車は、原告の斜め後方から進行してきたものではあるが、前記(1)アのとおり、本件横断歩道は幹線道路上にあり、横断者において後方からの右折車両の存在も予見できるものであるし、本件事故時本件自動車のライトが点灯していたこと及び本件自動車と原告との接触部位からすれば、原告が左方の安全に右より注意を払って横断していれば、本件自動車の右ドアミラー下の側面が原告左腰部に接触するまでの間に、原告が本件自動車の存在に気付くことができたと認められ(少なくとも衝突前に本件自動車の前部が原告の側方から前方を進行してきていることになるから、ライトの光が視野に入っていたものと推認できる。)、その時点で原告が立ち止まることで、接触は回避可能であったということができる。
とすれば、原告には、本件横断歩道直近を横断するに当たり、左方の安全を確認するのを怠り、漫然横断していたことにより、本件自動車が右折進行してくるのに気が付くのが遅れた過失が存在するといえる。」

このように裁判所は、事故の発生した時間帯が夜間であること、車がライトを点灯させていたこと等から、被告車の接近に気づくことができかつ回避可能だったとして、0対100の過失割合を修正して原告に5%の過失があると判断しています。

今回ご紹介した裁判例は、横断歩道における基本的な過失割合を、被害者が車の接近を気づけたとして修正している点で、参考になると思い今回ご紹介させていただきました。

(文責:弁護士 松本達也

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。