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交通事故の注目の裁判例

2018/06/06 更新

併合11級脊柱変形障害等を残す42歳女子介護ヘルパーの逸失利益を、婚姻の蓋然性があったと賃金センサス女性全年齢平均を基礎に67歳まで14%の労働能力喪失で認定した事案

福岡地裁 平成29年10月17日判決

自保ジャーナル2013号

今回は、交通事故により、脊柱変形障害等の後遺障害を残した被害者(42歳独身女性)の、逸失利益について解説します。(本件の争点は多岐に渡りますが、今回は逸失利益の問題に絞って解説します。)

本件では、42歳女性が、信号のある交差点を自転車で走行中に、左折してきた自動車と衝突し、第1腰椎骨折、歯根破折の傷害を負い、結果として自賠責併合11級が認定されました。

本件訴訟では、事故当時に、婚姻の可能性はあったが、独身で1人暮らしをしていた被害女性の逸失利益における基礎収入の計算方法が問題となりました。

これについて、裁判所は以下のような判断をしました。

まず、「原告(※註:被害女性)は、本件事故当時からEと婚姻する意思を有し、具体的に婚姻の時期についてもEとの間で話を進めており、かつ、その予定については両人の親族とも話していたというのであり、本件事故の治療を終えた平成26年9月頃から同居を開始してその後に現実に婚姻したことからすれば、原告は、本件事故時において、近い時期にはEと婚姻する蓋然性があったというべきである。また、Eはフルタイムの営業職に従事しており、婚姻した現在では原告はE及びその両親と4人で生活しているというのであるから、本件事故がなったとすれば、訪問ヘルパーの職に従事しながらも家事に従事し、いわゆる兼業主婦として稼働していたであろうと認められる」と判断した。

その上で、被害女性の基礎収入を「賃金センサス平成25年女性全年齢平均賃金は353万9,300円であり、原告のヘルパーとしての平成24年収入額224万7,590円を上回るから、家事従事者として前者の金額(353万9,300円)を基礎収入とみるのが相当である」と認定した。

【コメント】

一般的に、兼業主婦の逸失利益の基礎収入は、実収入が賃金センサス女性労働者の全年齢平均の賃金額を下回る場合には、上記平均賃金により算定するとされています。
本件では、事故当時には、まだ婚姻をしていないが、婚姻の蓋然性があった女性の逸失利益の基礎収入を、実収入ではなく、賃金センサス女性全年齢平均の賃金額が相当であると判断されました。これにより、基礎収入が、実収入よりも約130万円も高く認定されました。

とりわけ女性に関しては、実収入よりも主婦としての基礎収入を計算した方が高いケースがあります。

事故発生時には、婚姻状態になくても、婚姻の蓋然性が高いと判断されれば、主婦としての基礎収入が認定される可能性があります。裁判では、いかに婚姻の蓋然性は高かったのか、そして、婚姻後には家事業務をしていたであろうことを、具体的に立証できるのかがポイントになります。

(文責:弁護士 前田 徹

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