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交通事故の注目の裁判例

2018/06/27 更新

無職者の後遺障害逸失利益を賃金センサス男・高卒・全年齢平均賃金の7割を基礎に認定した事例

京都地裁 平成29年10月24日判決

自保ジャーナル2013号

今回は、事故当時無職だった30代男性の被害者について、後遺障害逸失利益を賃金センサスの平均賃金を用いて計算したという事件をご紹介します。

本件は、被害者が、バイクを運転して青信号の交差点を直進しようとした際に、交差点の対向車線から右折進行してきた加害車両の側面に衝突した事故です。バイクと自動車の衝突事故でよくある事故態様、いわゆる右直事故でした。

被害者は、本件事故により、頚椎骨折、頭部打撲等の傷害を負い、治療を継続しましたが、後遺症が残ってしまいました。具体的には、頚椎部の運動障害について後遺障害等級第8級2号、適応障害による不安等の症状について第14級9号に該当すると判断され、後遺障害等級併合第8級の認定を受けました。

本件で争点となった事項は過失割合や後遺障害の程度など複数に及びますが、ここでは、逸失利益に関する判断についてご説明します。

加害者側は、被害者には事故当時定収がなく、専門学校卒業後ほとんどの期間は定職に就いておらず過去に正社員としての勤務実績がないなどと主張し、被害者の基礎収入はゼロ、あるいはごく限定された金額であるという旨主張しました。

これに対し、裁判所は、概ね次のとおり判断して、被害者の逸失利益を認めました。

「後遺障害による逸失利益は、長期の将来にわたる収入の減少に対するてん補であるから、本件事故当時無職であることなどの事情があっても、永続的に就労の蓋然性がないといえない以上は、逸失利益は肯定しうるものと解される。」

「本件事故以前の職歴・稼働実績に照らし、男子・高卒・全年齢平均賃金458万8,900円(平成23年の賃金センサス)の7割に相当する収入が得られる蓋然性があるものと認める」

逸失利益は計算方法によって大きな金額の差がでやすい費目ですので、加害者側と争いになりやすい損害費目です。そのため、基礎収入額、喪失率、喪失期間について、慎重に検討する必要がありますので、逸失利益の問題が出た場合には交通事故の専門家に相談することをお勧めします。

逸失利益とは、簡単にいうと交通事故による後遺症がなければ得られたであろう将来の収入のことです。そのため、事故前から無職だった人については逸失利益が認められないようにも思われますが、一般的には、失業して無職の人であっても、労働能力と労働意欲があり、就労の蓋然性(可能性)がある場合には逸失利益が認められることが多いです。失業していた人の逸失利益の計算は、原則として失業以前の収入や、平均賃金を参考にして算出することになります。

(文責:弁護士 今村 公治

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