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交通事故の注目の裁判例

2018/07/19 更新

1級1号の遷延性意識障害を残す16歳男子の将来介護費を近親者介護費及び職業介護費を併せて日額2万円が認められた判例

名古屋地裁 平成29年10月17日判決

自保ジャーナル2013号

今回は、自賠責1級1号の後遺障害に関する将来介護費を、日額2万円で認めた判例をご紹介します。

被害者(男性 16歳)は、平成22年11月、自転車で丁字路に進入中、左方直進路から直進してきた乗用車に衝突され、重傷頭部外傷、頸椎骨折等の傷害を負いました。

被害者は522日入院しましたが、頭部外傷による意識障害や四肢体幹の運動障害が残ってしまいました。この部分について、自賠責に後遺障害の申請をした結果、1級1号の後遺障害が認定されました。その後、損害賠償額をめぐって裁判となりました。

本件では、特に後遺障害の将来介護費が争点となりました。

被害者(原告)は、今回の後遺障害による将来介護費は日額3万円であると主張しました。

保険会社側(被告)は、介護については様々な器具が用いられており、物理的な仕組みが充実しているから、日額3万円は高額過ぎると主張しました。

裁判所は以下のとおり、判断して、本件の将来介護費を日額2万円と判断しました。

「X(被害者)には、頭部外傷後の遷延性意識障害及び四肢体幹運動障害の後遺障害が残存している。これによりXは、食事、後遺、排尿、排便及び入浴はいずれも全面的に介助が必要であり、屋内外ともに歩行は不能で、車いす操作は大部分介助を要する。また、記憶記銘力障害、注意障害、易疲労性、集中力低下及び勘定抑制障害により、リハビリテーションを効率良く行うことができない。文字表示機能を用いて意思伝達を行っているものの、十分な意思疎通を図ることは不可能である。家庭、地域社会及び学校等における活動能力は完全に欠如しており、終日全介助用状態にある。」とし、「Xの後遺障害の内容及び程度、それに伴う介護の内容及び負担の程度並びに現時点で要している介護費用(公的給付を含む)の金額等を総合的に考慮すると、控えめに算定しても、症状固定後、XがDセンターを退院する平成26年3月17日までの期間(260日)の近親者介護費用としては日額1万円、Xが退院して以降、同人の平均余命までの期間の近親者介護費及び職業介護費は併せて日額2万円とする」として、平均余命につき日額2万円で将来介護費を認定しました。

今回の事件では、頭部外傷により意識障害及び四肢体幹の運動障害を残すものとして、1級1号が認定されていました。この障害が残ったことにより、将来の介護費がどれほどかかってくるのかという点については、難しい議論があり、しばしば問題になります。

この点、例えば赤い本2004年下巻「重度後遺障害に伴う諸問題~将来の介護費を中心として~」では、以下のように論じられています。

「従前から、介護の負担の大きさに鑑みれば、近親者の介護費用が低すぎることが問題とされ、現在日額8,000円まで引き上げられたところです。この8,000円が妥当かどうかという問題はあるにせよ、近親者による介護は、介護のプロとして専門的にサービスを供給する職業的介護との質的な違いがあることは否定できず、金額に差があることはやむを得ないでしょう。裁判例を見ますと、1日当たりの介護費は、近親者は2,000円から8,000円、職業付添人は8,000円から2万4,000円の範囲で認められています。近時の裁判例の傾向を踏まえると、職業付添人の場合、1日あたり1万5,000円程度までは通常と言えるようになってきています。」
このように、将来介護費は、後遺障害等級がついたからといって当然に介護費の日額が導かれるものではなく、被害者に残った後遺障害の内容を前提として、障害の程度、生活状態、どのような場合にどのような介護が必要か等を具体的に議論しなければなりません。

本件裁判例では、被害者が後遺障害により、食事、後遺、排尿、排便及び入浴はいずれも全面的に介助が必要であり、車いす操作も介助を要し、十分な意思疎通を図ることも不可能であり、終日全介助用状態にある影響を考慮して、一定の将来介護費を認定しており、今回、参考になる事例としてご紹介させていただきます。

(文責:弁護士 大友 竜亮

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