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交通事故の注目の裁判例

2018/09/03 更新

10歳男子の併合11級後遺障害逸失利益を進学校に入学している等から賃金センサス大卒全年齢平均を基礎に67歳まで20%の労働能力喪失で認めた事案

高松高裁 平成29年12月1日判決

自保ジャーナル2020号

今回は、症状固定時に13歳だった男子の逸失利益について解説します。(本件の争点は多岐に渡りますが、今回は逸失利益の問題に絞って解説します。)

本件では、事故時10歳男子が、交差点横断歩道を走って横断中、右方から進行してきた被告運転の乗用車に衝突され、脳挫傷、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い、結果として自賠責併合11級(12級13号精神障害、13号2号複視)が認定されました。

本件訴訟では、症状固定時に、13歳であった男子の逸失利益、とりわけ、基礎収入をいくらとすべきかが問題となりました。

逸失利益について、裁判所は以下のような判断をしました。

まず、基礎収入については、「原告(※註:男子)は症状固定時に13歳であって、中高一貫の進学校であるH学校に在学し、成績も良好であったことが認められるから、将来、大学に進学する蓋然性があるものと認めるのが相当である。そうすると、原告の基礎収入は、症状固定時の平成27年賃金センサス第1巻第1表の男子の大学・大学院卒の全年齢平均賃金663万7,700円とする」としました。

次に、「労働能力喪失率については、「原告は、本件事故後、脳挫傷痕があり、これに起因して時々立ちくらみがあること、正面視以外を見た場合に複視の症状を残していること、左感性音難聴、左近視の後遺障害(自賠責保険の後遺障害に該当しなくても、後遺障害であることに疑いはなく、裁判所が自賠責保険の後遺障害認定基準に拘束されることはない。)を残存していることに加え、原告が未だに学生でいかなる職業に従事するか不明であることを総合考慮すると、原告の労働能力喪失率は20%と認める」と判断しました。

労働能力喪失期間については、「いわゆるむち打ち症のように、その器質的要因がはっきりしないもいのは格別、局部の神経症状のすべてが10年程度の期間経過によって緩和ないし回復するものではない。特に、本件の場合、時々立ちくらみがするとの神経症状は、脳挫傷痕という器質的要因がはっきりしているのであるから、通常の後遺障害と同様に、労働能力喪失期間は、67歳まで認める」と判断しました。

その上で、結論として、逸失利益は、賃金センサス男性大学・大学院卒全年齢平均を基礎収入に45年間20%の労働能力喪失で認定しました。

【コメント】

一般的に、学生・生徒の逸失利益を算出する場合、基礎収入は、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額を基礎とするとされています(赤い本・上巻より)。

もっとも、家族の学歴も高く、成績優秀な児童については、4年制大学を卒業することは確実とみて、新大卒男女の平均賃金を裁判例もあります。

本件では、男子が県内有数の進学校に進み、成績が優秀であったことを理由に、将来、大学に進学する蓋然性があるものと認めるのが相当であるとして、基礎収入は、賃金センサス第1巻第1表の男子の大学・大学院卒の全年齢平均賃金とする、と認定されました。

学生・生徒の逸失利益の計算は、様々な要素を考慮する必要があり、とても複雑ですが、労働能力喪失期間が長いので、計算方法によって、大きく金額が変わってきます。被害者が学生・生徒で、後遺障害が認定された事案では、交通事故に詳しい弁護士に一度相談されることをお勧めします。

(文責:弁護士 前田 徹

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