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交通事故の注目の裁判例

2018/09/21 更新

21歳男性会社員の後遺障害逸失利益を賃金センサス男学歴計全年齢平均賃金を基礎に認定した事例

名古屋地裁 平成29年12月19日判決

自保ジャーナル2019号

今回は、事故当時21歳だった男性の被害者について、後遺障害逸失利益を賃金センサスの全年齢平均(男子労働者・学歴計・全年齢平均)を用いて計算したという事案をご紹介します。

本件は、被害者が、普通貨物自動車を運転して信号のない交差点を直進走行していたところ、同交差点の左側から直進進入してきた自動車に衝突されたという交通事故です。

被害者は、本件事故により、第1腰椎破裂骨折、脊髄損傷等の傷害を負いました。事故後に両下肢の知覚鈍麻や筋力低下、膀胱直腸障害や勃起不能などの障害を残し、後遺障害等級の事前認定で別表第二第5級2号の認定を受けました。

本件で争点となった事項は過失割合や後遺障害等級など複数に及びますが、ここでは、逸失利益の基礎収入に関する判断についてご説明します。

加害者側は、原告が高校を中退してから本件事故にあうまでの約4年間、アルバイトを転々としたり、正社員になった会社を退社したりし、仕事に就いていない期間が相当程度あったことを指摘しました。

これに対し、裁判所は、概ね次のとおり判断して、被害者(裁判例では「原告」)の逸失利益について、賃金センサスの平成24年男子学歴計全年齢平均賃金の529万6,800円を基礎収入として42年間分、喪失率79%で計算して、7,290万6,892円もの逸失利益を認めました。

  • 原告は、本件事故時21歳、症状固定時25歳であるところ、事故前年の給与所得は314万6,000円、事故前3ヶ月分の給与の月額平均は30万2,666円(年額換算すると363万1,922円)である。
  • 賃金センサスの平成24年・男子労働者・学歴計・20歳~24歳の平均賃金は、311万5,500円であるから、原告は、本件事故時、少なくとも賃金センサスの男子労働者・学歴計の平均賃金相当の収入を得ていた。
  • 原告の稼働状況、収入額及び年齢等に鑑みると、原告の基礎収入につき、賃金センサスの平成24年・男子労働者・学歴計・全年齢平均賃金の539万6,800円を基礎とするのが相当である。

以前、「無職者の後遺障害逸失利益を賃金センサス男・高卒・全年齢平均賃金の7割を基礎に認定した事例」をご紹介いたしました。

逸失利益とは、簡単にいうと交通事故による後遺症がなければ得られたであろう将来の収入のことです。逸失利益は損害金額が大きくなりやすい費目でして、本件でも総損害額の半分以上を占めていました。そのため、逸失利益については、基礎収入額、喪失率、喪失期間について、慎重に検討する必要があります。

(文責:弁護士 今村 公治

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