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交通事故の注目の裁判例

2018/10/12 更新

約3ヶ月前に就職した30歳男子会社員の後遺障害逸失利益をセンサス男子学歴計平均の8割で認定した判例

横浜地裁 平成30年2月26日判決

自保ジャーナル2022号

今回は、約3ヶ月前に就職した男子会社員の逸失利益を、男子学歴計平均8割で認めた判例をご紹介します。

被害者(男性 30歳)は、平成23年2月、横浜市内の片側2車線道路の左側車線をバイクで進行中、路外施設侵入のため、対向右側車線から右折してきた大型貨物車に衝突され、右大腿骨解放骨折、右大腿動脈損傷、右大腿静脈損傷等の傷害を負いました。

被害者は183日の入院を含む約4年1か月間入通院しましたが、右大腿骨を切断して、右下肢短縮障害、右大腿部の幻肢痛等から自賠責4級5号認定の後遺障害が残りました。その後、後遺障害逸失利益(後遺障害が残り、労働能力が減少するために、将来発生するものと認められる収入の減少のこと)の賠償額をめぐって裁判となりました。

本件では、特に後遺障害の逸失利益の金額が争点となりました。

後遺障害による逸失利益の算定方法は、原則として、被害者の事故前の収入の金額(基礎収入)に、後遺障害による被害者の労働能力の喪失の程度(労働能力喪失率)を乗じ、その状態が継続する期間(労働能力喪失期間)の年数に応じた中間利息の控除を行って算定がなされます。

被害者(原告)は、就職して3ヵ月あまりの事故であり、給料の実績だけで算定するのは不相当であること、本件事故当時、30歳と若年であること、将来平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があったといえることからすれば、賃金センサス平成27年男性学歴計平均賃金(547万7000円)とすべきであると主張しました。

これに対し被告は、本件事故前3ヵ月の収入合計91万7,600円を12ヶ月分に引き直した367万400円を基礎収入とするべきと主張しました。

裁判所は以下のとおり判断して、本件の後遺障害逸失利益の基礎収入を、男子学歴計平均賃金547万7,000円の約8割に当たる438万1,600円と判断しました。

「原告が、本件事故後、男子学歴計平均賃金を得る蓋然性があったと認めるに足りる具体的な事情はないものの、原告が本件事故当時30歳と比較的若年であり、本件事故の約3ヵ月前である平成22年10月27日に当時の勤務先会社に採用されたばかりであって、賞与の支給やその後の昇給の可能性は十分にあったと考えるのが相当であるから、少なくとも平成27年男子学歴計平均賃金547万7,000円の約8割に当たる438万1,600円程度の収入を得る蓋然性はあった」とし、「逸失利益の算定にあたっては、上記の通り、基礎収入を438万1,600円とし、労働能力喪失率を92%(後遺障害4級)とし、症状固定時から67歳までの就労可能年数として32年のライプニッツ係数を乗じる」と、センサス男子学歴計平均の8割を基礎収入に32年間92%の労働能力喪失で認定しました。

今回の事件では、右大腿骨切断により、右下肢短縮障害、右大腿部の幻肢痛を残すものとして、4級5号の後遺障害が認定されていました。逸失利益を計算する際の基礎収入金額をいくらにするのかという点については、難しい議論があり、しばしば問題になります。

給与所得者は、原則として事故前の収入を基礎として算出されますが、現実の収入が賃金センサスの平均額以下の場合には、平均賃金が得られる蓋然性があれば賃金センサスの平均額が認められたり、本件のケースのように、若年労働者(概ね30歳未満)の場合には、学生との均衡の点もあり全年齢平均の賃金センサスを用いられたりすることが多い傾向にあります。

(文責:弁護士 大友 竜亮

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