メニュー

交通事故の注目の裁判例

2018/10/24 更新

横断歩道を歩行中に被告乗用車に衝突され死亡した9歳男子の死亡慰謝料を2,400万円認め、両親各300万円、2人の兄に各150万円の固有の慰謝料を認めた事例

名古屋高裁 平成29年9月28日判決

自保ジャーナル2011号

今回は、横断歩道を歩行中に被告乗用車に衝突され死亡した9歳男子の死亡慰謝料を2,400万円認め、両親各300万円、2人の兄に各150万円の固有の慰謝料を認めた裁判例をご紹介します。  

平成26年10月29日午後2時頃、被害者である9歳男子小学生が横断歩道を歩行中、 時速約50キロメートルで走行してきた自動車に衝突され、死亡する事故が発生しました。

本件事故は、見通しのよい道路で、対向車線の車が横断歩道を横断する被害者のために停止していたにもかかわらず、加害者は本件交差点よりも進行先の信号表示に気を取られ、横断歩道を横断していた被害者を交差点の直前で発見し、回避しようとしたが間に合わず被害者を跳ね飛ばして死亡させたという、加害者に一方的かつ重大な過失がある事故でした。

そこで両親及び2人の兄が、加害者に損害賠償を請求しました。

裁判所は、

  • 事故当時、家族一緒に生活していたこと
  • 母親は、事故直後、被害者のランドセルに記載されていた連絡先を見た者から事故の連絡を受け、直ちに現場に駆け付けたが、被害者は道路の側溝の蓋の上に横たわって、既に意識レベルが低くなっていたこと
  • 母親は、病院に搬送された後、治療室の外で待機していたところ、50分後に医師から死亡宣告を受けたこと
  • 父親は、職場で事故の連絡を受け、直ちに病院に駆け付けたが、被害者は既に亡くなっていたこと
  • 死亡直後は、兄弟が話さなくなったこと  事故に居合わせた兄は、本件事故の様子を家族に話すことはないこと  母親は、事故に居合わせた兄を責める等、家族は悲しみをぶつける方法に苦慮しているような状況が続き、自宅での会話がめっきり減少していること
  • 事故に居合わせた兄は、中学に入学後、友人との間で自殺を考えている旨のやりとりをしていたこと
  • 家族は、現時点においても、自らの気持ちを抑えながら生活をする毎日を送り、殊に母親は心身ともに不安定な状態であること
  • 両親は、一方的に加害者に過失のある事故により突然小学生の子供を失い、未だそのショックを癒すことができない生活を送っていること  また、事故後の加害者の対応にも、釈然としない思い等を抱き続けていること
  • 2人の兄も、事故当時中学1年と小学5年というこれから思春期にさしかかる時期に突然弟を失い、両親がショックから立ち直れない中で、気持ちを閉じ込めた生活をする等、多大な苦痛を被っていること

を認定し、慰謝料について、被害者本人について2,400万円、両親について各300万円、2人の兄について各150万円を認定しました。

慰謝料は、被害者が受けた精神的な苦痛に対するてん補として賠償がなされるものです。被害者が死亡した場合、近親者についても賠償が認められます(民法711条)。

(近親者に対する損害の賠償) 第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

近親者固有の慰謝料が認められるのは、民法711条に掲げられている「被害者の父母、配偶者及び子」に限られるわけではなく、被害者との間に実質的に同視できる身分関係が存在すれば、711条類推適用により固有の慰謝料を請求することができます。本件においては、兄弟についても個別の事情を考慮し、固有の慰謝料が認められました。

では、両親だけでなく、兄弟にも慰謝料が認められるとしても、その金額はどの程度認められるのでしょうか。
類似裁判例においては、

  • 9歳女子の死亡慰謝料につき、両親に各300万円、兄に100万円
  • 6歳女子の死亡慰謝料につき、両親に各300万円、兄に100万円
  • 5歳女子の死亡慰謝料につき、両親に各300万円、弟に100万円

が認定されました(いずれも、地方裁判所の裁判例)。

本件では、個別の事情を考慮し、両親に各300万円、2人の兄に各150万円が認められました。

慰謝料の認定にあたっては、具体的な主張立証を尽くしていく必要があります。関係する具体的事実を主張立証することが大事であることを再認識することとなった裁判例でした。

(文責:弁護士 根來 真一郎

交通事故の注目の裁判例

ご相談から解決までの流れ