2018/11/01 更新その他

46歳男子の入院保険金請求は客観的な契約上の要件である「入院」該当性の根拠は認められないと請求を棄却した事例

鹿児島地裁 平成29年9月19日

自保ジャーナル2007号

今回は、46歳男子の入院保険金請求は客観的な契約上の要件である「入院」該当性の根拠は認められないと請求を棄却した裁判例をご紹介します。

46歳男性は、平成23年2月1日から同年3月12日まで腰痛等で整形外科に入院し、その後も整形外科や精神科等への入院を繰り返し、平成27年1月24日から同年3月16日まで総日数554日入院したとして、医療保険契約を締結する損保に対し、既払金90万円を控除して入院保険金462万円を求めて訴えを提起したという事案です。

この事案で、裁判所は、「本件保険契約における「入院」の定義(医師による治療が必要であり、かつ自宅等での治療が困難なため、病院又は診療所に入り、常に医師の管理下において治療に専念すること)からしても、単に当該入院が医師の判断によるということにとどまらず、同判断に客観的な合理性があるか、すなわち、患者の症状等に照らし、病院に入り常に医師の管理下において治療に専念しなければならないほどの医師による治療の必要性や自宅等での治療の困難性が客観的に認められるかという観点から判断されるべきもの」であると規範を立てて、本件入院は、「客観的にみて、病院に入り常に医師の管理下において治療に専念しなければならないほどの医師による治療の必要性や自宅等での治療の困難性を認めることはできない。原告の入院を認めた医師の判断は、結局のところ、原告の症状等からすれば、通常は自宅等での療養や通院での治療も可能であるが、原告が入院を希望しており、原告の個人的事情やそれまでの経緯等を考慮すれば、入院させて治療した方が望ましいというものにすぎず、原告個人との関係ではあり得ないものとまではいえないとしても、客観的な契約上の要件である「入院」該当性の根拠とすることはできない」と判断して、原告の保険金請求を棄却しました。

この裁判例では、実質的に入院の必要性を判断しているところが注目すべきポイントです。 この事案では、交通事故を直接の原因としない入院が含まれていたこと、症状からすると入院の必要性が実質的にはなかったことなどを理由に保険金に支払事由にあたる「入院」ではないと判断しています。

(文責:弁護士 辻 悠祐

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。