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交通事故の注目の裁判例

2018/12/05 更新

17歳女子高生の後遺障害逸失利益を賃金センサス男女計学歴計全年齢平均賃金を基礎に認定した事例

さいたま地裁熊谷支部 平成29年7月5日判決

自保ジャーナル2024号

今回は、事故当時17歳で高校3年生だった女性被害者について、後遺障害逸失利益を賃金センサスの男女計学歴計平均を用いて計算したという事案をご紹介します。

本件は、被害者が、信号のある交差点の歩道上で信号待ちをしていたところ、交差点内で衝突後に逸走した自動車に衝突されたという交通事故です。

被害者は、本件事故により、頭蓋底骨折、脳挫傷等の怪我を負い、高次脳機能障害のほか、視力低下、複視、聴力喪失などの障害を残し、後遺障害等級別表第一第2級1号の認定を受けました。

本件における争点は、逸失利益の他にも、将来介護費用や慰謝料額など複数に及びますが、ここでは、逸失利益の基礎収入に関する裁判所の判断についてご説明します。

被害者側は、高校生の場合、高校卒業近くまで進路は未定な場合が多く、男女を合わせた全労働者の平均賃金を用いるのが相当であると主張しました。他方で、加害者側は、被害者は、本件事故当日、就職説明会に向かう途中での事故だったことなどを指摘し、進路が全く未定だったわけではないから、男女別の女性高校卒全年齢平均賃金を基礎収入とするべきであると主張しました。

これに対し、裁判所は、概ね次のように判断して、被害者の逸失利益について、賃金センサスの平成25年男女計・学歴計全年齢平均賃金を基礎収入として47年間分、喪失率100%で計算して、8,431万8,303円もの逸失利益を認めました。

・原告が就職するか進学するかは未定であり、多様な就労可能性があったといえることを踏まえると、逸失利益の基礎収入の認定について男女計・学歴計の平均賃金を用いることが定着している「年少女子」として、逸失利益算定の基礎収入は平成25年賃金センサス男女計・学歴計の平均賃金468万9,300円と認めるのが相当である。

【コメント】

逸失利益とは、簡単にいうと交通事故による後遺症がなければ得られたであろう将来の収入のことです。逸失利益は損害金額が大きくなりやすい費目ですので、基礎収入額、喪失率、喪失期間について、適正な算定がなされているか慎重に検討する必要があります。

実務では、義務教育を修了するまでの女子年少者の逸失利益については、賃金センサスの全労働者の平均賃金を基礎収入とすることが多いです。他方、義務教育を修了したけれどもまだ若年の女子についても全労働者の平均賃金を用いるべきか、女子の平均賃金を用いるべきかは争いのあるところです(全労働者の平均賃金のほうが賃金センサス上の金額が高いので問題になります。)。
現時点における裁判例の傾向としては、義務教育の終了後でも高校生の場合には、男女別ではなく全労働者の平均賃金を用いる場合が多いといえると思います。なお、高校生でも大学進学等の進路がすでに決まっている場合や、社会人の場合には、相応する女子の平均賃金を用いることが多いと思います。

(文責:弁護士 今村 公治

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