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交通事故の注目の裁判例

2018/12/07 更新

63歳主婦の高次脳機能障害を自賠責同様3級認定し、将来介護費は近親者による介護として日額3,000円とし、また、近親者の固有の慰謝料を認めた事例

福井地裁 平成30年3月30日判決

自保ジャーナル2026号

今回は、自賠責3級3号認定の高次脳機能障害の他、脳挫傷に起因する14級3号の右耳感音性難聴等が残存した63歳専業主婦の女性について、将来介護費が日額3,000円と認定され、また、近親者の固有の慰謝料が認められた事例をご紹介いたします。

本件事故は、被害者が横断歩道を歩行横断中に、加害乗用車に衝突され、脳挫傷、右側頭骨骨折の傷害を負ったという事故です。

被害者は、本件事故により、高次脳機能障害として中等度記憶障害、注意障害及び社会的行動障害が生じ、また音楽性幻聴を伴う右耳感音性難聴等の傷害を負いました。

ここでは、本件で争点となった事項のうち、将来介護費の金額と、近親者に固有の慰謝料が認められるかどうかという点に関する裁判所の判断についてご説明致します。

被害者は、将来介護費について、職業介護人による介護も必要であるとして職業介護人につき1日1万円(年額365万円)を請求しました。

これに対し、裁判所は、被害者は症状固定後も随時付添い、看視、声かけ等の介護が必要であることが認められるが、他方で、重い負担を伴う身体的介助ないし介護の必要性があることまでは認められず、現に、Xが介護保険法上の介護認定を受けていないことにも鑑みると、その将来介護費については、日額3,000円と認めるのが相当である。将来、被害者が主張する職業介護人が必要となる蓋然性については、被害者の夫が糖尿病を有するほか、腰部脊柱管狭窄症による手術歴があり、今後も腰痛の悪化が懸念されることを考慮しても、既に認定した被害者が必要とする介護の内容や、成人した実子が2人おり特に次女による介護が得られる可能性もあること等も踏まえると、その高度の蓋然性を認めるには足りないとし、近親者による将来介護費として日額3,000円で認定しました。

一方、原告の親族が主張する固有の慰謝料については、被害者に後遺障害等級3級3号に該当する高次脳機能障害及び14級3号に該当する音楽性幻聴を伴う右耳感音性難聴の後遺障害が残存し、今後、被害者の生涯にわたって看視や声かけ等を要する状態になったのであるから、被害者が死亡した場合に比肩する精神的苦痛を受けた者と認められるのであり、夫につき100万円、2人の子についてはそれぞれ各50万円ずつの近親者固有の慰謝料請求を認めました。

このように、将来介護費について、職業介護人が必要か近親者による介護で足りるかどうかについては、被害者の方の症状や必要な介護の内容だけでなく、介護保険法上の介護認定の有無、介護する近親者の体調や、近親者が介護できる可能性の有無等も総合考慮して判断されています。そのため、逆に介護してくれる近親者がいなかったり、介護保険法の介護認定を受けていたりすることは、職業介護人が必要とされる方向で考慮される可能性があるといえるかと思います。

また、近親者の固有の慰謝料請求の可否についても、被害者が将来にわたりどのような状態になったか、その状態が、死亡した場合に比べてどうかという点を考慮して判断されています。そのため、それらの要素を具体的に主張していくことが重要かと思います。

(文責:弁護士 小林 義和

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