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交通事故の注目の裁判例

2019/01/10 更新

中心性頸髄損傷等の傷害を負った24歳男性が,1度目の後遺障害診断書作成から約7年9か月後の症状固定を主張した事案につき、消滅時効完成により請求を棄却した事案

東京地裁 平成30年6月6日判決

自保ジャーナル2028号

今回は、後遺障害診断書が2通存在し、後の診断を症状固定日と主張して損害賠償請求を行った事案につき、消滅時効の完成を認め、請求を棄却した事案をご紹介します。

被害者である原告(事故当時24歳の男性)は、横断歩道を歩行中、被告の車両に衝突される事故に遭い、外傷後頸髄症ないし中心性頸髄損傷の傷害を負いました。その後、2日間の入院、19日の通院を余儀なくされ、事故から約1年2か月後(平成21年2月26日(固定日①といいます))に症状固定の診断を受けました。その後、後遺障害申請を行ったものの、自賠責においては非該当となりました。非該当の結果を受け、加害者側の保険会社が賠償提示を行いましたが、金額に大きな隔たりがあり、示談にはなりませんでした。

その後、一度目の後遺障害診断書が作成されてから約7年9か月後(事故から約8年11か月後)に、別の病院で後遺障害診断書が作成され、平成28年11月21日(固定日②といいます)とされました。原告は、症状固定日は、固定日②であると主張し、また、第12級13号の後遺障害に該当すると主張して、本件訴訟を提起しました。

他方被告は、固定日①が症状固定日であり、既に時効により消滅していること(時効の援用)、後遺障害は残存していないこと等を主張しました。

本件で一番の争点となったのは、消滅時効が既に完成しているか、という点でした。

現行民法724条では、「損害および加害者を知った時」から3年間で、不法行為による損害賠償請求権は時効により消滅すると定めています。

裁判所は、遅くとも一度目の後遺障害診断を受けた平成21年4月2日の時点で、後遺障害である本件残存症状の存在を現実に認識し、加害者への損害賠償が事実上可能になった(=損害および加害者を知った)のであるから、同日より消滅時効は進行する旨判断しました。なお、本件では、平成22年に被告側より賠償提示があり、時効中断事由(債務承認)がありましたが、いずれにせよ訴訟提起時には既に3年が経過しており、消滅時効が成立すると判断されました。

原告の主張(固定日②が症状固定日)に対しては、①一度目に後遺障害診断を受けてから約7年9か月の間、本件症状の治療・診察等のために医療機関に通院した事情がうかがわれない、②症状固定日を平成28年11月21日と診断したことにつき、医学的理由ないし根拠が示されていない、という2点から、固定日②を症状固定日と認めることはできないと判断しました。  

事故から相当程度期間が経過したにも関わらず解決していない事案については、消滅時効にかからないかを注意する必要があります。

※なお、民法改正により、人身損害の損害賠償請求に関する消滅時効は、3年ではなく5年に延長されますが、改正民法が施行されるまで(2020年4月1日を予定)は依然として3年で消滅時効にかかってしまいますので、注意が必要です。

(文責:弁護士 村岡 つばさ

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