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交通事故の注目の裁判例

2019/02/26 更新

頚部痛等と腰部痛等の後遺障害について併合14級認定された51歳男性について素因減額の適用を否定した事例

神戸地裁 平成30年7月11日判決

自保ジャーナル2031号

今回は、頚椎捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負い、自賠責併合14級後遺障害認定を受けた被害者について、素因減額の適否が争われた裁判例をご紹介します。(本件では、症状固定日や、損害額も争点となっていますが、今回は素因減額の可否の問題に絞ってご説明します。)

本件事故は、51歳の被害者男性(原告)が、乗用車を運転して、信号機のある交差点を青信号で左折進行したところ、右方から信号無視して侵入してきた加害者(被告)の運転する乗用車に衝突されたという事故です。

被害者は、本件事故により頚椎捻挫、腰部打撲等の傷害を負い、約7カ月間の通院治療をした結果、頚椎捻挫後の頚部痛等について14級9号、腰椎捻挫後の腰部痛等について14級9号に該当する後遺障害等級併合14級の認定を受けました。

被告側は、「原告の訴える頚部痛は、変形性脊椎症に起因する」、「原告の腰部痛は既往症に起因する」などと主張し、原告には治療の長期化の原因となった既往症があるため損害のうち30%は素因減額されるべきである、という旨の主張をしました。

そのため、本件訴訟では、素因減額の可否が争点となりました。この点について、裁判所は次のような判断をしました。

  1. ①原告は、本件事故によって初めて頚部や腰部の疼痛の症状を訴えて通院を開始しており、本件事故以前から原告の頚部や腰部に症状が生じていたとは認められないこと、
  2. ②医師が原告の症状・治療への影響が懸念されるような既往歴や基礎疾患について特にない旨回答していること、
  3. ③原告の治療経過は、本件事故の態様や原告の受傷内容に照らして明らかに長期化しているとまで認めることはできないこと を総合考慮すると、原告の頚部、腰部の状態が、原告に生じた傷害の有無・程度や後遺障害の残存等に寄与するまでの身体的素因であったとは認めることができない。

裁判所は概ね上記のように判断して、結論として、素因減額の主張を否定しました。

【コメント】

一般的に、身体的な素因については、被害者に対する加害行為と、被害者の罹患していた疾患とが共に原因となって損害が発生した場合には、被害者の疾患を考慮して、損害額を減額することがあります。たとえば、持病が原因で事故による怪我の治療が通常よりも長期化したと言える場合には、損害額が一定割合減額されることがあり得ます。 他方で、被害者に身体的特徴があったとしても、それが疾患に当たらない場合には、特別の事情がない限り、減額しない扱いが多いです。

加害者側の任意保険会社から、被害者の加齢に伴う変化を捉えて素因減額の主張がでることがありますが、疾患とまでいえるものなのかどうか、素因減額をすべき程度なのかどうかを慎重に検討する必要があります。

(文責:弁護士 今村 公治

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