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交通事故の注目の裁判例

2019/03/20 更新

追突された38歳女子の接骨院施術費を症状の改善から必要性・有効性・合理性が認められると通院期間約7ヶ月半の5割について事故との因果関係を認めた判例

名古屋地裁 平成30年8月31日判決

自保ジャーナル2033号

今回は、接骨院施術費について、通院期間約7ヶ月半の5割につき事故との因果関係を認めた判例をご紹介します。
 
被害者(女性 38歳)は、平成27年4月、名古屋市内で乗用車を運転して停止中、被告運転の乗用車に追突され、頚部挫傷、腰部挫傷、左肩関節捻挫等の傷害を負いました。
被害者は、整形外科や接骨院にて178日の実通院を要し、接骨院への通院期間は約7ヶ月半に及びました。その後、治療費の賠償額をめぐって裁判となりました。
 
本件では、特に、事故との因果関係が認められる接骨院の治療費の金額が争点となりました。

一般に、治療費については、被害者が交通事故により受けた傷害の具体的な内容・程度に照らし、症状が固定するまでに行われた必要かつ相当な治療行為の費用であれば、事故と相当因果関係のある損害として、その賠償が認められます。ここにいう必要かつ相当な治療行為とは、一般に、医学的見地からみて当該傷害の治療として必要性及び合理性・相当性の認められる治療行為であり、かつ、その報酬額も社会一般の水準と比較して妥当なものをいうとされています。

被害者(原告)は、整形外科では待ち時間が長く待っている間に痛みが出ていたため、比較的近所で通いやすい接骨院に通院していたのであり、また、頚部痛等の症状は、接骨院での施術を受けた後は緩和され、継続して施術を受けることで改善する傾向にあったのであるから、接骨院での施術の必要性・有効性は認められると主張しました。
これに対し被告は、接骨院の施術頻度と期間は一般的に妥当と考えられる範囲を大きく超えており、施術は医師の具体的指示・管理の下で行われたものでないこと等からすると、接骨院の施術費は本件事故に基づく損害とは認められないと主張しました。

裁判所は、以下のとおり、当該被害者の接骨院施術費を症状の改善経過から必要性・有効性・合理性が認められるとし、通院期間約7ヶ月半のうち、実通院165日分の5割の施術費につき事故との因果関係を認めました。

「接骨院への通院は医師の指示に基づくものではないが、E病院の担当医師は、接骨院への通院を勧めるまではしていないものの、除痛効果があれば適切であるとして、接骨院への通院を認めていたこと、原告(被害者)は、施術により痛みが軽減した旨を陳述記載及び供述していること接骨院作成の施術証明書・施術費明細書等には、原告の症状が改善していく経過の記載があることからすると、接骨院での施術については、その必要性・有効性・合理性を認めることができる」とし、「接骨院への約7ヶ月半に通院期間のうち、実際に通院した日数は165日であり、施術費用の合計は95万4,600円だったのであり・・・その通院頻度及び施術費用総額は高過ぎるといわざるを得ない。また、・・・E病院においても接骨院への通院を認められていたに過ぎず、勧められていた訳ではないことからすると、接骨院への通院の必要性は高くなかったものであり、そうであるにもかかわらずこのように高頻度の通院をすることは、相当とは認められない」として、接骨院での施術費用についてはその5割に相当する47万7,300円に限って本件と相当因果関係を有する損害と認めました。

鍼灸・マッサージ費用等のいわゆる東洋医学に基づく施術費やカイロプラクティック療法の費用等については、一般に、賠償が認められるためには、原則として医師の指示が必要であると取り扱われています。
しかし、本件のように医師の指示のない場合であっても、いわゆる東洋医学に基づく施術については、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」及び「柔道整復師法」により法的に免許制度が確立されていること、鍼灸治療については、医療機関で解説されているペインクリニック等が鍼灸治療を用いているなど、全国的に普及・一般化していることもあり、施術の必要性、有効性、施術期間・施術内容・施術費の相当性に関する具体的な主張・立証がある場合には、その賠償が認められるケースもあります。そのようなケースの一つとして、今回、参考になる事例としてご紹介させていただきました。
 ※もっとも、本件事案においても、「医師の勧めがあったわけではないことから、接骨院への通院の必要性は高くなかった」と認定しているように、接骨院の施術費については、「症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合」に認められる傾向にはあります。

(文責:弁護士 大友 竜亮

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