2019/05/17 更新過失相殺

合図と同時に左折の被告乗用車に衝突した後続原告自動二輪車の過失を1割と認めた事例

東京地裁 平成30年10月31日判決

自保ジャーナル2037号

今回は、原告が自動二輪車を運転し、交差点を直進中、合図と同時に左折をした先行被告乗用車に衝突・転倒した事案について、原告の過失割合を1割、被告9割と判断した裁判例をご紹介します。

この事案は、飲食店経営の原告Xが、妻である原告Vを同乗して自動二輪車を運転し、交差点を直進中、先行する被告運転の乗用車が合図と同時に左折したため、原告が運転する自動二輪車が被告乗用車に衝突されて、原告らが転倒した事故です。

この事案では、過失割合が争点になりました。被告は、本件事故の現場付近道路の第1車線を走行し、本件事故の現場の交差点手前でウィンカーを出し、時速10-15キロで左折しようとしたところ、被告車が直進方向に対して45度程度左折したところで、被告車の左後方から直進してきた原告車が被告車の左側面に衝突した。被告車が左折時に道路の左側端に車体を寄せていなかったことを考慮しても、過失割合は原告ら1割、被告9割とするのが相当であると主張し、原告らは、被告は、ウインカーを出さずに急左折しており、本件事故はもっぱら被告の過失によるものであると主張しました。

それに対して、裁判所は、「本件事故の態様は、原告車が、本件事故の現場の交差点を西から東に向けて第1車線左側を直進しようとしたところ、原告車から自動車数台分ほど前方を進行していた被告車が、あらかじめウィンカーを出すことなく又は左折開始と同時にウインカーを出して、道路左側端に車体を寄せることなく左折を開始し、原告車が被告車に衝突したものと認められる。このような事故態様からすれば、被告には、適切にウインカーを出すことなく、道路左側端に車体を寄せずに左折を開始した過失が認められ、本件事故は主として被告の過失により発生したものというべきであるが、原告Xについても、前方を十分に注視し、適切に速度調整、ハンドル操作をするなどして衝突を回避できた可能性は否定できず、一定の過失があることは否定できない。以上のとおりの双方の過失の内容、程度等からすれば、過失割合は、原告ら1割、被告9剖とするのが相当である。」として、双方の過失割合を認定しました。

別冊判例タイムズでは、直進単車と先行左折四輪車の基本の過失割合は、直進単車2割、先行左折四輪車8割とされています。その基本の過失割合から、個別事情を考慮したうえで、過失割合を修正することになります。この事案では、あらかじめウィンカーを出すことなく又は左折開始と同時にウインカーを出して、道路左側端に車体を寄せることなく左折を開始し、原告車が被告車に衝突したものと認定して、その上で、過失割合について、原告1割、被告9割と認定した点が注目すべき点といえます。

(文責:弁護士 辻 悠祐

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。