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交通事故の注目の裁判例

2019/05/27 更新

TFCC損傷について後遺障害14級9号を認定し、賃金センサス25~29歳平均賃金を基礎収入として10年間5%の労働能力喪失で逸失利益を算定した事例

名古屋地裁 平成30年9月5日判決

自保ジャーナル2035号

今回は、裁判でTFCC損傷について後遺障害14級9号が認定され、逸失利益の損害額の算出方法が問題となった裁判例をご紹介します。(本件では、過失割合や、後遺障害の有無なども争点となっていますが、今回は「逸失利益」の問題に絞ってご説明します。)

本件事故は、31歳の被害者男性(原告)が、自転車に乗って横断歩道上を直進進行中、被害者の右方から交差点に左折するために進入してきた自動車に衝突されたという事故です。

被害者は、本件事故による怪我の治療を約7カ月間続けた結果、右手関節痛及び左足関節痛の症状が残りました。しかし、被害者の後遺症について、損害保険料率算出機構では、自賠法施行令に定める後遺障害には該当しない(非該当)と判断されていました。(なお、3回にわたる異議申立に対しても、結論は非該当のままでした。)

これに対して、裁判所は、被害者の右手関節につきTFCC損傷が生じ、後遺障害が残存したものと認め、その等級を別表第二第14級9号に該当するとしました。

そのうえで、被害者の損害について、逸失利益の算出方法が問題になりました。

被害者は、症状固定時から67歳までの35年間19%の労働能力が喪失したと主張し、基礎収入は賃金センサス大卒男子労働者の全年齢平均賃金である648万7,100円として算出するべきであるとし、逸失利益2,018万1,758円を請求しました。

これに対して、裁判所は概ね次のように判断して、結論として、逸失利益の金額として金170万9,430円を認めました。

①原告の後遺障害の程度、原告の年齢(事故当時31歳、症状固定時32歳)等に照らし、労働能力喪失率を5%、労働能力喪失期間を10年間と認めるのが相当である。
②本件事故前の原告の経歴、原告の年齢、今後10年間における昇給の可能性等を考慮すれば、逸失利益を算定する際の基礎収入は、平成27年の賃金センサスの産業計・企業規模計・大学卒・男子労働者の25から29歳の平均賃金である442万7600円を相当と認める。

<コメント>
後遺症逸失利益の算定は、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の可能性、日常生活上の不便などの諸事情を考慮して行います。逸失利益の金額は計算方法によって大きな差が生まれやすいため、後遺障害が認定された事案では争いになりやすいポイントです。後遺障害の程度や、仕事内容、収入の変化等の具体的諸事情に応じて、基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間が正しく算定されているかをよく検討するようにしましょう。

(文責:弁護士 今村 公治

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