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交通事故の注目の裁判例

2019/06/17 更新

14歳女子の自賠責12級左下腿瘢痕が労働能力に影響はないと後遺障害逸失利益を否認し後遺障害慰謝料400万円を認めた事例

東京地裁 平成30年9月14日判決

自保ジャーナル2035号

今回は、14歳女の子の左足に残った傷跡について後遺障害12級が認定されたケースで、逸失利益や後遺障害慰謝料について判断をしている事例をご紹介します。

本件事故は、14歳の女子中学生が歩道を友人と歩行中、アクセルペダルをブレーキペダルと踏み間違え加速し、歩道に乗り上げた普通貨物車に衝突、轢過され負傷したという事故です。

被害者は、骨盤骨折、上顎前歯脱臼、両下腿デグロービング損傷等の傷害を負い、治療を約2年7ヶ月間続けた結果、左足の大腿部から腓腹部までの広範囲に傷跡が残りました。この左足の傷跡の後遺障害について、自賠責(損害保険料率算出機構)では、12級左下腿瘢痕の認定を受け、裁判所も同様の判断をしました。

そのうえで、本件裁判では、被害者の損害について、逸失利益の認定及び後遺障害慰謝料の金額が問題になりました。

被害者は、左足に瘢痕が残ったことにより、18歳から67歳までの49年間14%の労働能力が喪失したと主張し、逸失利益として約1,100万円を請求しました。また、後遺障害慰謝料については、女性として最も多感な時期に、左足の傷跡等が残ったことなどからすると、後遺障害等級11級に準じた金額が認められるべきであるとして、420万円を請求しました(後遺障害等級12級の通常の後遺障害慰謝料基準は、290万円)。

これに対して、加害者は、被害者に逸失利益は生じていないと主張しました。
裁判所は概ね次のように判断して、結論として、逸失利益は認めませんでしたが、後遺障害慰謝料400万円を認めました。

 ①原告(被害者)の瘢痕は、その位置からすると、コミュニケーションの際に直ちに相手の視線に入るものとはいえないし、着用する衣服によっては必ずしも人目につくものとはいえない。
 ②原告が、事故当時、俳優やモデル等、仕事の性質上、下腿を露出することを要し、かつ、下肢を含む容姿が重視される職業に係る活動をしたり、オーディションを受けるなどそのような職業に就くための準備活動をしていた様子はうかがわれない。これらの事情に照らすと、原告の性別、年齢を考慮しても、上記瘢痕が原告の労働能力に直接的な影響を及ぼすものであると認めることができない。
 ③本件事故により残った瘢痕は、人目につくことがあるものであり、それらの痕が目立たないような衣服を着用することを余儀なくされることがあると考えられること、原告は症状固定時、16歳の高校2年生であったこと、その性別等を考慮すると、周囲の視線が気になるなどして、対人関係や対外的な活動に消極的になるなど、間接的に労働に影響を及ぼすおそれがある。以上の事情を考慮すると、後遺障害慰謝料は、400万円と認めるのが相当である。

<コメント>
本件のように、瘢痕の後遺障害が残った場合には、逸失利益の有無が争いになりやすいポイントです。裁判上、醜状障害は、デスクワーク、荷物の搬送等の通常の労働にとって特段影響を及ぼさないとして逸失利益は発生しないと考えられることもあります。しかし、被害者がモデルやホステス等の容姿が重視される職業に就いている場合や、営業マン、ウェイター等のそれなりの容姿が必要とされる職業に就いている場合には、ファンや店の客足が減る、勤務先の会社で営業職から内勤に配置転換となり昇進が遅れるなどの影響を及ぼすことが考えられます。被害者の職業、年齢、性別等を考慮した上で、被害者の醜状がその労働に与える影響を考慮して労働能力の喪失を主張していくことが重要です。

また、本件のように、瘢痕が労働能力に直接的な影響を及ぼすものであると認められない場合であっても、瘢痕が人目につくようなものであり、それらの痕が目立たないような衣服を着用することを余儀なくされることがある等考えられる場合には、性別や年齢等を考慮して、後遺障害慰謝料の金額が増額して認定されることがあります。

醜状障害の場合には、逸失利益の認定や後遺障害慰謝料の金額について、醜状の内容や程度、性別、年齢、職業、今後の労働に与える影響の具体的諸事情等に応じて幅のある認定がされ得ます。これらの点に留意して適切に主張立証を尽くすことが重要です。

(文責:弁護士 大友 竜亮

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