メニュー

交通事故の注目の裁判例

2019/07/23 更新

自賠責9級16号顔面醜状を残す19歳男子専門学校生の労働能力喪失を67歳まで47年間9%と認定し、賃金センサス男子全年齢平均を基礎収入に後遺障害逸失利益を認めた事例

福岡高裁 平成30年12月19日判決

自保ジャーナル2041号

今回は、顔面に複数の線状痕等を残し、自賠責9級16号が認定された19歳男子専門学校生の後遺障害逸失利益について、労働能力喪失率9%、労働能力喪失期間47年間、基礎収入を賃金センサス男性全年齢平均で認めた裁判例について解説します。(本件の争点は多岐に渡りますが、今回は後遺障害逸失利益の問題に絞って解説します。)

本件では、19歳の男子専門学校生(原告)が、原付自転車で道路を直進中、路外から侵入してきた自動車と衝突し、顔面挫滅創、両肩関節捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負い、その結果、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」として後遺障害(自賠法施行令別表第二9級16号)が認定されました。本件訴訟では、傷害慰謝料、後遺障害逸失利益などが争点となりましたが、後遺障害逸失利益について、裁判所は次のような判断をしました。

(労働能力喪失率について)
「(原告は)本件事故当時未就業であったことからすれば、俳優やモデル等の外貌そのものが重視される職種を全く志望しておらず、将来においてそのような職種に就く可能性は考えられないとしても、就業する職種等について確定していたわけではなく、営業職や接客業関係職など醜状が業績や収入に影響し得る職種などについて事実上制限されたなどの不利益があることは明らかであるから、およそ労働能力の喪失がなかったということはできない」が、「(原告は)本件事故前から志望していた公務員として就労している」等から、「(原告は)本件事故当時から公務員職を志望していたところ、警察官等を諦めた点については本件瘢痕が主たる原因とまでは認められないこと、本件瘢痕は公務員採用試験には必ずしも影響せず、(原告は)当初から志望していた公務員として現に採用に至ったこと、(原告は)当審の口頭弁論終結時点で21歳と若年であり将来の転職の可能性もあることなどの事情を総合すると、本件事故による本件瘢痕のために職業選択に当たり職種制限や将来の昇進等に不利益が生じたとしても、その影響により(原告が)喪失した労働能力は、9%と認めるのが相当である」として、労働能力喪失率を9%と認定しました。

(労働能力喪失期間について)
「本件瘢痕が経年的に改善されることは認め難いことなどを考慮すれば、労働能力喪失期間は20歳からの67歳までの47年間と認めるのが相当である」としました。

(基礎収入について)
「基礎収入については、(原告は)本件事故当時、専門学校に通学しており、未就業であったから、将来的に少なくとも平均賃金を得られる蓋然性があったものとして、賃金センサス男子全年齢平均の年547万7000円を用いる」としました。

結論として、後遺障害逸失利益として、886万3374円が認められました。

<コメント>
外貌醜状痕の後遺障害逸失利益については、一般的に、「被害者の性別、年齢、職業等を考慮した上で、醜状痕の存在のために配置転換されたり、職業選択の幅が狭められるなどの形で、労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合には、一定割合の労働能力の喪失を肯定し、逸失利益を認める」(赤い本下巻2011年(平成23年)版、40頁)と言われております。

経験上、裁判において裁判官に、「労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合」であると認められるのは、ハードルが高いと思います。

本件では、事故当時、被害者の年齢が若く未就業であったことから、醜状が業績や収入に影響し得る職種への就業が事実上制限された点を裁判官が重視したのだと考えられます。

(文責:弁護士 前田 徹

交通事故の注目の裁判例

ご相談から解決までの流れ

  • 企業法律相談専門サイト
  • 債務整理 自己破産相談
  • 相続相談サイト
  • よつば総合法律事務所 Official website