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交通事故の注目の裁判例

2019/08/19 更新

後遺障害等級12級7号の右膝関節機能障害を残した、減収のない公務員の逸失利益を14年間14%の労働能力喪失で認定した判例

大阪高裁 平成31年1月22日判決

自保ジャーナル2042号

今回は、自賠責の後遺障害等級第12級7号が認定された公務員の被害者について、逸失利益の損害額の算定方法が争いとなった裁判例をご紹介します。(本件では、後遺障害の有無や、過失割合なども争点となっており、1審と2審で結論が異なる部分もあり、裁判所の考え方を知るうえで参考になる裁判例ですが、今回は大阪高裁の「逸失利益」に関する判断に絞って解説します。)

本件事故は、53歳の被害者男性が、自転車に乗って道路左端を直進走行していたところ、後方から走行してきた加害車両に衝突されたという事故です。

被害者は、本件事故による怪我の治療を約8カ月間続けましたが、右膝の痛みや、関節の機能障害(右膝が90度くらいまでしか曲がらない)の症状が残りました。

裁判所は、被害者の右膝関節機能障害について、後遺障害が存在すると判断しました。そのうえで、被害者の逸失利益の算出方法が問題になりました。

被害者は、症状固定時54歳で、平成28年簡易生命表によると54歳男性の平均余命は28.91年であるから、その半分の14年間を労働能力喪失期間とし、14年間にわたり労働能力を14%喪失したと主張しました。

これに対して、加害者側は、被害者に後遺障害はないと主張しました。また、被害者は本件事故後に休業していないこと、就労の業務内容に変化はなく、事故後にほとんど減収していない(給料に大きな変化がない)などの事情から、逸失利益はないと反論しました。

この逸失利益の争点について、裁判所は概ね次のように判断して、結論として、逸失利益の金額として金1133万4446円を認めました。

  • ①被害者は、これまでのところ労働能力喪失に伴う減収が現実化していないし、定年退職までは減収が顕在化しない可能性が高いということができる。
  • ②しかしながら、被害者は、右膝の痛みや不安定さによって業務の支障が生じないように努力しているものと認められ、そのことが減収を食い止めている面も否定できないし、本件後遺障害の内容、部位及び程度と被害者の職務内容に照らせば、被害者が定年退職後に高収入を得るため再任用以外の転職を試みた場合、本件後遺障害が不利益をもたらす可能性があるといわざるをえない。
  • ③したがって、被害者は、本件後遺障害により14年間にわたり症状固定時の給与収入の14%の得べかりし収入を失ったものと推認すべきである。
  • ④逸失利益につき症状固定時の金額を算出すれば1133万4446円となる。

<コメント>
後遺症逸失利益の算定は、労働能力の低下の程度、職種や業務内容、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の可能性、日常生活上の不便などの様々な事情を考慮して行います。

後遺障害等級が認定された場合には、逸失利益の部分で大きな金額差が生まれやすいため、逸失利益の算定は争いになりやすいポイントです。

今回の裁判例のように、たとえ事故後に減収の事実がなくても、本人の努力によって減収が生じていないだけである場合には、逸失利益を加害者に請求できることがあります。後遺障害等級が認定されている事案の場合には、仕事内容や収入額に変化がなくても、逸失利益が発生していないかを慎重に検討しましょう。

(文責:弁護士 今村 公治

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