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交通事故の注目の裁判例

2019/08/23 更新

第1事故で治療中の3カ月後に第2事故による損害は第1事故と第2事故が寄与したものと認め第2事故以降の損害の寄与度を3対7の割合で認定した判例

東京地裁 平成30年11月28日判決

自保ジャーナル2042号

今回は、第1事故で治療中に第2事故に遭った場合の損害は、第1事故と第2事故が寄与したものと認め、第2事故以降の損害の寄与度を3対7の割合で認定した裁判例をご紹介します。

被害者(男性、保険外交員)は、平成28年2月1日に追突される事故(以下「第1事故」といいます。)に遭い、腰椎捻挫、頚椎捻挫、右肩関節挫傷等の傷害を負い、治療をしていました。ところが、治療中の平成28年5月10日に再度追突される事故(以下「第2事故」といいます。)に遭い、腰椎捻挫、頚椎捻挫、左肩関節捻挫等の傷害を負いました。

被害者は、平成28年11月30日に症状固定となり、頚部痛、左上肢のしびれ等について自賠責14級9号の認定を受けました。

本件では、被害者が第2事故の加害者等に対して請求した、第2事故発生日以降の損害の認定額、認定方法が問題となりました。

原告(被害者)は、本件各交通事故により、第2事故後の長期の通院を余儀なくされ、後遺障害も残存する状況となったから、第2事故以降に生じた原告の損害は、民法719条第1項前段の共同不法行為の関係にあり、被告らは連帯して(第2事故以降に生じた損害の全体について)賠償の責任を負うと主張していました。

これに対し、裁判所は以下のとおり認定しました。

「共同不法行為が成立するためには、複数の加害行為が時間的、場所的に近接するなど、客観的に一連一個の加害行為であると認められることを要するというべきであるところ、本件各事故は、いずれも発生場所が異なり、また、第1事故の発生から第2事故の発生まで3か月以上の時間的間隔があるから、本件各事故が時間的、場所的に近接しているとはいえず、客観的に1個の加害行為であると評価することはできない」と共同不法行為の成立を否認し、「原告の損害のうち、第1事故及び第2事故の双方が寄与している第2事故以降の分については、寄与度に応じて割合的に書く事故に振り分けて算定する」「寄与度は3(第1事故):7(第2事故)とみるのが相当」と判断しました。

共同不法行為とは、民法719条1項の「数人が共同の不法行為によって他人に損害を与えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたか知ることができないときも、同様とする」との規定に基づくものです。 

交通事故の場合第1事故の症状固定後に第2事故に遭った場合、これは共同不法行為にはあたらないとする例が多いように思われますが、第1事故の治療中(症状固定前)に第2事故に遭った場合、共同不法行為が成立するか否かが実務上しばしば問題になります。

この点に関して、第1事故と第2事故の間が約11カ月空いていた場合でこれを認めたものもあれば(浦和地判平成4年10月27日判決)、同期間が2か月しかなくても否定したものもある(神戸地裁尼崎支判平成6年5月27日)ようです。

本判例では、第1事故の発生から第2事故の発生まで3か月以上の時間的間隔があるから、本件各事故が時間的、場所的に近接しているとはいえず、客観的に1個の加害行為であると評価することはできないと共同不法行為の成立を否定しました。近年は本判例のように共同不法行為の成立を狭く解する裁判例が多いように思われます。

現実として交通事故の治療中に不幸にも、再度の事故に遭われる方は少なくありません。この場合本件のような法律的に難しい問題を孕む可能性がございますので、専門家への相談を積極的にご検討ください。

(文責:弁護士 粟津 正博

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