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交通事故の注目の裁判例

2019/09/24 更新

併合6級後遺障害を残す47歳男子タクシー運転手の7級左下肢瘢痕は就労の支障になるとは認められないとし、10級左膝関節機能障害から労働能力喪失率を27%と認定した裁判例

東京地方裁判所 平成30年11月20日判決

自保ジャーナルNo.2041

1 はじめに

今回は、交通事故後に併合6級後遺障害を残したが、7級左下肢瘢痕(傷が治った後に残ってしまった傷跡)は就労の支障になるとは認められないとし、10級左膝関節機能障害から労働能力喪失率を27%と認定した裁判例をご紹介します。

2 事案の概要

本件は、自転車通行可の歩道を自転車に搭乗して進行中、右側車道から左折進行してきた被告大型貨物車に衝突・轢過され、左大腿骨が以下開放骨折、左大腿部、下腿部の皮膚欠損等の傷害を負い、左下肢瘢痕で自賠責7級、左膝関節機能障害について10級11号が認められ、それらが併合したことによって6級が認定された事案です。

3 後遺障害等級の併合とは

まず、本件で問題になった後遺障害等級の併合について簡単に説明します。
 交通事故のよって怪我をしてしまい、系列の異なる複数の後遺障害が残った場合、後遺障害等級の「併合」を行って最終的に1つの等級を定めます。併合のルールは、別表第二の後遺障害について、以下のようになっております。

(後遺障害の「併合」のルール)
①5級以上の後遺障害が2つ以上残存した場合
⇒重い方の等級を3つ繰り上げる
②8級以上の後遺障害が2つ以上残存
⇒重い方の等級を2つ繰り上げる
③13級以上の後遺障害が2つ以上残存
⇒重い方の等級を1つ繰り上げる
④14級の後遺障害が複数残存
⇒14級

なお、別表第一の後遺障害については、別系列の併合は行われません。

4 本件における裁判所の判断

本件において、原告は、逸失利益の計算の際、本件事故により左大腿骨外果開放骨折等の重篤な傷害を負い、長期間の固定や広範囲の皮膚移植手術を行わねばならなかったことにより、左下肢、背部、臀部に広範囲の瘢痕が残っただけでなく、左下肢の関節に後日のリハビリで改善することのできない非常に強い拘縮が生じた結果、補助具なく立位を保持することが困難で、左膝関節はほぼ曲げることができない状況になり、これまで一貫して従事してきた車両を運転する仕事につくことはほぼ不可能となったことを理由として、原告の労働能力喪失率は67%を下らないと主張した。

しかし、裁判所は、上記の原告の主張に対し、「本件事故による原告の後遺障害は、左大腿部・下腿部の皮膚欠損に伴う左下肢瘢痕につき後遺障害等級7級に相当し、左下肢受賞後の左膝関節拘縮に伴う左膝関節機能障害につき後遺障害等級10級11号に該当するが、左下肢の瘢痕については、左膝関節の機能障害をもたらす一因となるのとは別に、それ自体として原告が車の運転手等として就労する上での支障となるものとは認められないから、労働能力喪失率は27%とするのが相当である。」と判断した。

5 本件の特徴

本件の特徴は、労働能力の判断において、後遺障害等級7級に相当する左下肢瘢痕が「車の運転手として就労する上での支障となるものとは認められない」と裁判所が認定した点にあると思います。

一般的に、骨折後の骨の変形癒合(それに伴う痛みが無いケース)や歯牙欠損等で後遺障害等級が認定された場合、具体的な労働能力に影響を及ぼさないことも多々あります。(もちろん、見た目が変わってしまった事自体が影響を及ぼす等ということもありますので、一概には言えません。)そのような場合、実際に後遺障害等級が認定されているにも関わらず、労働能力の喪失が認められないとして逸失利益が認定されないことがあります。

そのため、本件では、併合後の等級に応じた労働能力喪失率である67%ではなく、実際に就労に影響を与える左膝関節機能障害に認められた等級である10級11号に応じた労働能力喪失率である27%を採用したものと考えられます。

6 まとめ

交通事故の影響で後遺障害が認められ、仕事に影響が出ている場合、加害者に対して逸失利益を損害として請求することになりますが、実際にどの程度逸失利益が認められるかは裁判まで進むと個別具体的な判断が必要になってきますので、そのようなケースでお困りの際は、是非一度弁護士にご相談いただくことをお薦め致します。

(文責:弁護士 加藤 貴紀

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