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交通事故の注目の裁判例

2019/11/01 更新

脊髄症状12級の後遺障害が残ったとの主張に対し因果関係及び後遺障害残存を否定した裁判例

京都地裁 平成31年2月26日判決

自保ジャーナル2044号

64歳の男性が自転車で進行して停止中、四輪車に接触されて転倒したという事故です。
事故から約6か月後、被害者は症状固定と判定され、次の症状が残ったと診断されました(後遺障害診断書に記載)。

  • 頸部痛
  • 両肩~上肢・手指のしびれ
  • 腰痛
  • 右大腿のしびれ
  • めまい
  • 背部痛
  • 頭痛

他覚的初見としては、頚椎の非外傷性の変性所見及びホフマン反射とトレムナー反射が陽性というものがありました。
この裁判で争点となった事項はいくつかありますが、ここでは、後遺障害に関する判断についてお書きします。

被害者は、自賠責保険に対して後遺障害認定申請(被害者請求)をしましたが、後遺障害非該当との回答がなされていました。
結論としては、裁判所も上記症状は後遺障害に該当しないと判断しました。
判決において裁判所が認定した事実は、次のとおりです。

1 被害者の症状固定までの通院歴は次のとおり

⑴ 1つ目の病院 事故当日
⑵ 2つ目の病院 事故から14日後~事故から35日後の22日間
⑶ 3つ目の病院 事故から37日後~事故から約6か月後の5か月間(症状固定・後遺障害診断書作成)

2 各症状

⑴ 腰痛及び下肢のしびれ

  1. ① 被害者が右下肢のしびれの症状を医師に告げたのは事故から5か月以上経過してからだった。このことにより初めて「腰椎捻挫」との傷病名がつけられた。
  2. ② 事故から症状固定までの間、腰部に対し牽引や温熱療法等の理学療法がされたことがない。

⑵ 両肩~上肢・手指のしびれ、めまい、背部痛、頭痛

  1. ① 2つ目の病院が記載した書類に「頭痛、上肢のしびれ、めまいは初診時にも終診時にもなかった、背部痛は初診時にはあったが終診時にはなかった」と記載されている。
  2. ② 3つ目の病院が記載した書類に「頭痛、上肢のしびれ、めまいは初診時にも終診時にもなかった」と記載されている。

⑶ 頸部痛

  1. ① 事故時から症状固定までの間、一貫して治療されている。
  2. ② 3つ目の病院が記載した書類に「頸部痛は初診時にも終診時にもあったが軽減した」と記載されている。
  3. ③ 4つ目の病院の初診時(症状固定の3日後です。)、被害者は問診票に「むち打ちとお尻を打ち、今はこしが強くいたい」と記載した。
  4. ④ 4つ目の病院の初診から3か月後に、4つ目の病院のカルテに「頸部痛出現」と記載されている。

痛みやしびれの症状が後遺障害であると判断されるためには、少なくとも、事故当初から症状固定までその症状が一貫して継続していると判定されることが必要です。このことから、⑴事故から5か月以上経過して初めて被害者が医師に告げた下肢のしびれや腰痛の症状が後遺障害であると認められないのは予想されるところです。⑵両肩~上肢・手指のしびれ、めまい、背部痛、頭痛の症状は、2つ目の病院の終診時や3つ目の病院の終診時になかったとの病院記載の書類があることから、これも後遺障害であると認められることは難しいといわざるをえません(3つ目の病院の終診時に「なかった」とされる症状がなぜ後遺障害診断書に記載されたのかはよくわかりません。)。

問題は⑶頸部痛ですが、判決では、受傷から症状固定までは一貫して治療の対象となったことは認めるものの、症状固定直後の問診票に頸部痛の症状を被害者が書かず、その3か月後に頸部痛が出現したとの治療経過や、3つ目の病院が「軽減」と判定されていることから、やはり後遺障害と認定される可能性は乏しい事案だったといえるでしょう。

これに加え、判決は、被害者が症状固定時に、事故とは因果関係の認められない多彩な症状を訴えていることを指摘し、頸部痛の症状が事故によるものがどうか判然としないと述べて、後遺障害ではないと判断しました。

なお、判決は、被害者に症状がないとまで認定しているわけではありません。「仮に原告(被害者)に頸椎症性脊髄症の症状が出ているというのであれば、逆に、頸椎の変性初見による症状が、本件事故とは関係がなく発現した可能性を示唆する。」と、仮に症状があったとしてもそれが事故によるものである(事故との因果関係がある)と認定することができないと判断しています。

真新しい判断がされたものではありませんが、痛みやしびれの症状が後遺障害であると認められるかどうかについての判断過程を示すものとして、紹介いたしました。

(文責:弁護士 佐藤 寿康

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