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交通事故の注目の裁判例

2019/11/07 更新

12級6号左肩関節機能障害の後遺障害を否定し、12級13号左肩関節痛等の併合12級を認めた裁判例

京都地裁 平成31年3月22日判決

自保ジャーナル2048号

肩関節の症状について後遺障害等級が争いになった裁判例をご紹介します。

自賠責後遺障害認定では、左肩関節中心の疼痛等の症状について14級9号「局部に神経症状を残すもの」という認定がでていたところ、裁判では被害者が左肩関節の機能障害について、関節可動域制限の原因となる客観的所見があるから12級6号「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」に該当すると主張しました。これに対して、裁判所は、左肩関節の疼痛等の症状について12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当すると判断しました。

肩関節の疼痛、可動域制限の後遺障害に関して、自賠責の判断、被害者の主張、裁判所の判断がそれぞれ異なるため、肩関節の後遺障害等級を考えるにあたって参考になる裁判例です。

28歳の女性被害者が乗っていた自動車が停止中に、加害者の自動車に追突されたという事故です。この事故により、被害者は、頸椎捻挫、腰部捻挫、左肩関節部打撲傷、左肩棘上筋腱損傷の傷害を負いました。事故後約6か月通院治療しましたが、後遺症が残り、自賠責で左頚項部痛等の症状、左腰痛等の症状、左肩関節中心の疼痛等の症状について、それぞれ14級9号に該当するという認定を受けました。

裁判では、被害者側が左肩関節の機能障害について後遺障害12級6号に該当すると主張したため、左肩の負傷の程度と、左肩関節の症状についての後遺障害等級が争いになりました。

1 裁判所は、次のような事実を認定して、左肩腱板部分断裂が本件事故により生じたものであると判断しました。

  • 本件事故から約3か月後に撮影したMRI検査において棘上筋部分断裂があった。
  • 被害者は本件事故時28歳と若年で、本件事故以前には肩の痛みなどによる通院歴はなかった。
  • 初診時から症状固定に至るまで、一貫して左肩痛及び挙上困難を訴えていた。
  • T2強調脂肪抑制矢状断像の内容からすると、新しい腱板損傷と考えて矛盾しない。

2 また、裁判所は、左肩関節の後遺障害等級について、概ね次のように判断しました。

  • 棘上筋腱は、肩の外転運動のために重要な役割を果たし、棘上筋腱断裂では外転筋力の低下が認められるとされているところ、被害者の治療期間中の外転の可動域は明らかではない。後遺障害診断時において「他動110度、自動90度」と測定されているが、治療期間中の外転の可動域は明らかでなく、本件事故による可動域制限であるのか否か、測定値が正確なものであるのか否かについて検証が困難である。
  • 治療期間中、前挙(屈曲)の可動域が専ら測定されているが、事故直後の他動値100度から160度、170度と回復していて、本件事故により不可逆的な可動域制限が生じたとは認められない。
  • よって、左肩関節の機能障害は認められず、12級6号には該当しない。
  • 左肩関節の疼痛が残存している。これは、本件事故直後から治療期間中を通じて一貫したものであり、棘上筋腱の損傷によるものと考えられるから、他覚的所見によって証明されたものとして、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する。

<コメント>
肩関節の後遺障害等級は争いになりやすいです。肩関節の疼痛が残存している場合には、後遺障害等級14級9号か12級13号の可能性があります。また、肩の可動域制限(肩が上がらないなど)がある場合には、症状によって、12級6号、10級9号、8級6号などの等級が認定される可能性があります。

本件では、本件事故により左肩腱板部分断裂が生じていたと認定されました。しかし、被害者の治療期間中の外転の可動域が明らかでなかったために、“左肩の可動域制限について後遺障害等級12級6号に該当する”という被害者の主張は、裁判所に否認されました。後遺障害診断書には可動域制限がある旨の記載(「他動110度、自動90度」)があったようですので、治療期間中にも可動域をしっかり測定していれば、事情によっては後遺障害等級12級6号が認定されていたかもしれません。後遺障害が12級13号か、12級6号かで、逸失利益の賠償額が大きく異なる可能性があるため、本件では大事な争点になっていました。

肩の可動域に関する後遺障害については、肩の可動域を正しく測定していること、肩の可動域制限がMRI等の画像で医学的に説明できることが必要になると考えられますので、治療期間中から交通事故に詳しい弁護士に相談しながら進めるのをおすすめします。

(文責:弁護士 今村 公治

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